世界遺産研究協議会「越境する〈遺産〉」の開催
文化遺産国際協力センターでは例年、世界遺産を有する国内の自治体関係者を主な対象とした情報発信や意見交換を目的とした「世界遺産研究協議会」を開催しています。令和7(2025)年度は「越境する〈遺産〉-世界遺産とつながる人々の生活、信仰、環境-」と題して、私たちが文化財保護を通じて守り伝えようとしている「遺産」とはいったい何か、という根本的な問いをテーマに掲げました。12月22日に東京文化財研究所で対面開催し、全国から111名の参加を得た盛会となりました。
冒頭、鈴木地平氏(文化庁)から「世界遺産の最新動向」と題して、昨年7月にパリのユネスコ本部で開催された第47回世界遺産委員会における議論や決議等の概略を報告いただいた後、当センター国際情報研究室長・金井健が趣旨説明を行い、本会の幕を開けました。その後、伊藤文彦氏(三重県斎宮歴史博物館)が、有形・無形・景観・史跡といった様々な価値が集合した遺産の代表格である「道」をテーマに「複雑な文化遺産における〈遺産〉の捉え方」、続いて文化遺産国際協力センターアソシエイトフェロー・松浦一之介が景観との関係における遺跡保護の観点から海外先進地の比較事例として「世界遺産〈アグリジェントの考古地区〉とシチリア州考古公園システム」と題した講演を行いました。また、胡光氏(愛媛大学)が四国4県の合同で世界遺産登録を目指している「四国遍路」、土屋みづほ氏(大阪府教育庁)が皇室ゆかりの現役の墓地(陵墓)であり、かつ近年は熱心な古墳ファンも多い世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」を取り上げ、遺産としての価値づけや保存活用の具体的な取り組みについて、それぞれ事例報告を行いました。後半は、登壇者の全員参加によるパネルディスカッションを行い、遺産の価値の源泉は何か、その価値を守り、強化するための方法、そして世界遺産における「遺産」の意味づけについて活発な議論が交わされました。
これらの講演、事例報告、パネルディスカッションの内容は、年度末に報告書にまとめて公開する予定です。また、過年に開催した世界遺産研究協議会についても報告書として刊行し、一部は既に当センターのウェブサイトで公開しています。ぜひご覧ください。
