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国際研修「紙の保存と修復」2025の開催

装潢そうこう修理技術実習にて
手すき和紙(本美濃紙)工房見学

 令和7(2025)年、国際研修「紙の保存と修復」を政府間機関ICCROM(文化財保存修復研究国際センター)と共催しました。今年は年8月25日から9月12日の日程にて、10名の研修生が参加しました。1992年に始まった本研修ですが、常に人気が高く、今年の応募者は166人でした。
 長い繊維が特徴であるコウゾで作られる和紙は、薄くて丈夫で、耐久性があり、文化財を損傷しない安全性の点からも優れています。そのため、各国々の美術品などの修復に用いられます。研修では、紙や文化財保護制度に関する講義や、国の選定保存技術である「装潢そうこう修理技術」の実習を行いました。研修生は既に、紙の保存修復家として経験を積んできていますが、修復実習では、日本の道具や材料の使い方を含む正しい情報を確認する機会になりました。終了後のアンケートにおいても好評で、帰国後に同僚や教え子と経験を共有するとともに、知人にも本研修を勧めるとのことでした。
 また、本研修では、研修生同士、研修生と日本の専門家である講師、現地見学での修復材料や道具の製造者との交流も目的にしています。このような交流は、参加者にとって利益になるだけではなく、日本の専門家や道具材料の製造者にとっても、良い機会になります。国内外の文化財保存修復の担い手、文化財を修復するための道具や材料の作り手の懸け橋になることも念頭に置き、今後の研修も行っていきたいと考えています。

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