研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
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国際研修「ラテンアメリカにおける紙の保存と修復」2025の開催

研修生、ラテンチーム、ICCROM関係者、日本チームによる記念撮影
日本チームによる実習風景 

 東京文化財研究所では、ICCROM(文化財保存修復研究国際センター)およびCNCPC-INAH(メキシコ国立人類学歴史機構、国立文化遺産保存修復機関)との三者共催により、国際研修「ラテンアメリカにおける紙の保存と修復」を平成24(2012)年よりメキシコシティで実施してきました。北米や欧州に比べて文化財保存修復に関する研修や情報交換の場が少ないとされる中南米地域を対象とすることで、この地域における紙文化財の保存修復に貢献することを目的としています。
9回目の開催となる今回は、令和7(2025)年11月12日から26日までの日程で、アルゼンチン共和国、ボリビア多民族国、チリ共和国、コロンビア共和国、グアテマラ共和国、メキシコ合衆国の6カ国から、計9名の研修生を迎えて実施しました。
 研修は、日本チームの講師が前半を、後半をメキシコ合衆国やスペイン王国の講師からなるラテンチームがそれぞれ担当しました。前半では、日本の紙本文化財の保存修復技術に関する基礎として、和紙や紙本文化財の修復技術などについて講義するとともに、その修復技術のうちでも応用性が高い技術や道具、材料を中心に実習を行いました。
 研修に対する満足度は非常に高く、和紙や日本の技術に直接触れて学び、その背景にある哲学も含めて理解する機会を得られたことを高く評価する声が寄せられました。
 なお、ラテンチームの講師を務めたのは、30年以上続く国際研修「紙の保存と修復」などの研修を、東京文化財研究所でかつて受講したメキシコ人専門家です。このように国外に人材が着実に育っていることは、当研究所にとっても大きな成果といえます。今回の研修で伝えた技術と知識、人と人とのつながりが、さらに国内外の文化財保存に寄与することを期待しています。

国際研修「紙の保存と修復」2025の開催

手すき和紙(本美濃紙)工房見学
装潢そうこう修理技術実習にて

 令和7(2025)年、国際研修「紙の保存と修復」を政府間機関ICCROM(文化財保存修復研究国際センター)と共催しました。今年は年8月25日から9月12日の日程にて、10名の研修生が参加しました。1992年に始まった本研修ですが、常に人気が高く、今年の応募者は166人でした。
 長い繊維が特徴であるコウゾで作られる和紙は、薄くて丈夫で、耐久性があり、文化財を損傷しない安全性の点からも優れています。そのため、各国々の美術品などの修復に用いられます。研修では、紙や文化財保護制度に関する講義や、国の選定保存技術である「装潢そうこう修理技術」の実習を行いました。研修生は既に、紙の保存修復家として経験を積んできていますが、修復実習では、日本の道具や材料の使い方を含む正しい情報を確認する機会になりました。終了後のアンケートにおいても好評で、帰国後に同僚や教え子と経験を共有するとともに、知人にも本研修を勧めるとのことでした。
 また、本研修では、研修生同士、研修生と日本の専門家である講師、現地見学での修復材料や道具の製造者との交流も目的にしています。このような交流は、参加者にとって利益になるだけではなく、日本の専門家や道具材料の製造者にとっても、良い機会になります。国内外の文化財保存修復の担い手、文化財を修復するための道具や材料の作り手の懸け橋になることも念頭に置き、今後の研修も行っていきたいと考えています。

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