スタッコ装飾及び塑像に関する研究調査(その7)

ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡でのクリーニングテスト
セリヌンテ遺跡公園収蔵庫でのスタッコ装飾調査

 文化遺産国際協力センターでは、令和3(2021)年度より、運営費交付金事業「文化遺産の保存修復技術に係る国際的研究」の一環として、スタッコ装飾および塑像に関する研究調査を進めています。
 ギリシャ・ローマ時代の考古遺跡を対象とした研究を推進するため、令和7(2025)年9月8日から26日にかけてイタリアを訪問し、ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡、ポンペイ遺跡公園、セリヌンテ遺跡公園を訪問しました。
 ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡では、東京大学を中心とする調査団によって発掘されたローマ時代の装飾門を対象に、前年度に作成した研究計画書に基づき、設置されているスタッコ装飾の技法や材料に関する調査を行うとともに、現代的な保存修復手法に関する各種実験を実施しました。
 一方、シチリア島のセリヌンテ遺跡公園では、管理所長と面会し、本研究の趣旨および目的についてご説明させていただきました。内容をご理解・ご納得いただいた結果、遺跡公園が所蔵するギリシャ時代のスタッコ装飾を研究対象とすることについて正式な同意を得るとともに、全面的なご協力をいただけることとなりました。また、神殿に使用されている石灰岩に物理的および化学的要因による劣化がみられることから、その劣化抑制方法についても研究してほしいとの要望がありました。
 さらに、パレルモ文化財監督局においても、本研究の趣旨をご理解のうえご検討くださり、彼らの管轄下にあるパレルモ近郊のローマ時代遺跡についても研究対象として検討してはどうかとのご提案をいただきました。
 以上のように、本研究の意義に対する理解と協力の輪が、関係機関を中心に着実に広がりつつあることが確認されました。今後は、今回訪問した各遺跡を主軸にギリシャ・ローマ時代のスタッコ装飾の技法および材料に関する比較調査を継続し、その構造や特性についての理解を深めるとともに、これらの保存修復方法やサイトマネジメントのあり方についても研究を進めていく予定です。

to page top