2025年度日韓無形文化遺産研究交流の実施

【写真1】江陵端午祭伝授館の研修室(研修に必要な楽器や衣装等も備えられている)
【写真2】江陵端午祭伝授館併設の劇場
写真3】満席の河回別神クッ仮面舞の普及公演(工事中のため仮設会場)
写真4】最終日に行った成果報告会(無形遺産局にて)

 東京文化財研究所 無形文化遺産部は、平成20(2008)年より大韓民国国家遺産庁無形遺産局と研究交流を実施し、その一環として相互に研究員を派遣して調査研究を行う人事交流を行っています。今年は10月11日~25日まで、無形文化財研究室長・前原恵美が「世襲に依らない伝統芸能教育等の体系的な推進」をテーマに調査しました。
 韓国も日本と同様少子化の時代を迎え、このことが伝統芸能の継承に影響を及ぼしかねない状況にあります。こうした現状を踏まえて今回の調査では、韓国の伝統芸能の保存会活動や、伝統芸能等の継承者育成の一端を国が採択した大学で実施する「国家無形遺産伝授教育学校」制度に焦点を当てることにしました。
 旧暦の端午の節句に行われる「江陵端午祭(カンヌンダノジェ)」(国の重要無形文化財第13号)や、村神を迎えて木製の仮面を掛けて舞う「河回別神(ハフエビョルシン)クッ仮面舞(クッタルノリ)」(国の重要無形文化財69号)は、いずれもユネスコの「人類の無形文化遺産代表的な一覧表」に掲載されています。これらの伝統芸能を継承する各保存会は、いずれも伝授館や公演のための場を備え(【写真1】【写真2】【写真3】)、そこを拠点に普及のための企画公演や展示、後継者育成のための様々なカリキュラムやその成果発表等を実施していました。また、国による「国家無形遺産伝授教育学校」制度に採択された慶尚(キョンサン)国立大学校、全南(チョンナム)大学校、韓国伝統文化大学校は、保存会とは別組織ではありますが、連携を模索しながら「大学教育」の中に伝統芸能や工芸技術の後継者育成を組み込む工夫をしていました。これらの環境や制度は、日本の伝統芸能継承を考える上で参考になる点が多いと感じました。もちろんそれぞれに、学歴社会と芸能習得の両立や、オーバーツーリズムの問題、教育機関と保存会のシームレスな協力関係の構築など課題も抱えているようですが、これらとて日本の伝統芸能継承の場でも起こり得る、あるいはすでに起こっていることではないでしょうか。今後とも、韓国の伝統芸能について理解を深めながら、日本の伝統芸能継承に資する手掛かりも見出せるよう努めたいと思います。
 調査から最終日の成果発表(【写真4】)まで、さまざまに心を尽くしてサポートしてくださった大韓民国国家遺産庁無形遺産局の皆様に改めて深謝いたします。

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