研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


香取秀真旧蔵資料の目録公開

香取秀真(『日本美術工芸』第185号、1954年3月から転載)
「香取秀真旧蔵資料」の一部

 文化財アーカイブズ研究室は、プロジェクト「専門的アーカイブと総合的レファレンスの拡充」の成果として、「香取秀真旧蔵資料」の情報をウェブサイトに公開しました。
 香取秀真(1874 – 1954)は、明治から昭和時代にかけて活動した金工家、金工史家、歌人で、金工界のみならず広く工芸界の中心的存在として工芸の発展振興に尽力しました。香炉・花器・釜・梵鐘など古典的モティーフを引きつぎながら、豊かな技術を生かした作風で知られ、また東洋金工史の研究に大きな業績を挙げました。「香取秀真旧蔵資料」は、氏の没後、昭和39(1964)年に遺族により東京文化財研究所に寄贈され、そのなかには、日記や作品制作のための意匠図案に加えて、日本各地の金工品に関する調査記録も含まれており、香取秀真研究だけでなく、日本金工史の研究においても有益な資料といえます。このたび、資料保全作業・目録整理などを行い、「香取秀真旧蔵資料」として公開いたしました。公開にあたっては、文化財情報資料部研究補佐員・田村彩子を中心に準備を進め、さらに旧職員の中村節子氏から、この資料群に関するさまざまな情報をご提供いただきました。
当研究所が長年にわたって蓄積してきた資料群を、文化財に関する研究課題の解決の糸口として、また幅広い分野の新たな研究を創出する契機として、ご活用いただければ幸いです。
※資料閲覧室利用案内
https://www.tobunken.go.jp/joho/japanese/library/library.html
アーカイブズ(文書)情報は、このページの下方に掲載されています。実際の資料は資料閲覧室でご覧いただけます。
※香取秀真旧蔵資料
https://www.tobunken.go.jp/joho/japanese/library/pdf/archives_KATORI_Hotsuma.pdf

ゲッティ・リサーチ・ポータルへの情報提供―印譜集、美術家番付など

GRP検索結果一覧表示画面
『真美大観』第1冊(GRP収録)

 東京文化財研究所は、ゲッティ研究所(アメリカ)と共同で、当研究所が所蔵する図書資料のデジタル化を進め、その書誌情報を「ゲッティ・リサーチ・ポータル」(GRP : https://portal.getty.edu/)に収録するプロジェクトに2016年から取り組んでいます。GRPは、世界各地の46館の美術館や図書館が所蔵する美術に関する図書のデジタルコレクション(約187000件、2023年4月現在)を、一括で検索・閲覧することができるオンライン・データベースです。2023年3月に、当研究所から、新たに以下のタイトルが追加収録され、当研究所から提供している図書等は、2178件となりました。

・明治期刊行美術全集(Complete series of Japanese Art of Meiji period)64件

・在外日本古美術品保存修復協力事業修理報告書(Cooperative Program for the Conservation of Japanese Art Objects Overseas)28件

・美術家番付(美術家番付(Ranking List of Japanese Artist)61件

・印譜集(Compilation of Artist’s Seals)88件

 このプロジェクトにより、当研究所の所蔵資料が、これまで以上に世界中の人々がアクセスしやすいかたちで公開され、美術や文化遺産の研究を研究する人々にとってますます貴重な情報源となることが期待されます。今後も、東京文化財研究所は、さまざまな形で世界に向けた情報発信を行い、文化財の保護と研究に貢献していく所存です。

東京文化財研究所年史資料の目録公開

「東京文化財研究所年史資料」のうち、シリーズ7関係団体「美術懇話会」
「東京文化財研究所年史資料」全体像

 文化財アーカイブズ研究室では、プロジェクト「専門的アーカイブと総合的レファレンスの拡充」の成果として、「東京文化財研究所年史資料」の情報をウェブサイトに公開しました。
 平成20(2008)年〜平成22(2010)年に『東京文化財研究所七十五年史』を刊行しています。「年史資料」は、その編纂のために収集・作成された文書類を中心とする資料群です。当研究所の母体である「美術研究所」が設立された昭和5(1930)年ころからの事務文書、所属職員が収集した文書、さらには他機関が所蔵する当研究所の関係文書の複製などで構成され、『七十五年史』刊行後も所内で保管されてきました。この資料群は、当研究所の歴史を跡づけるだけでなく、近代日本の文化行政や外交関係の研究にも有用であることから、その目録を公開し、当研究所資料閲覧室を介して、外部の研究者も活用できるようにするべく準備を進めてきました。
 目録作成については、文化財情報資料部研究補佐員の田村彩子が取り組み、既報のとおり、令和4年度第8回文化財情報資料部研究会「年史編纂資料の研究活用に向けた記述編成―東文研史資料を例として」にて、その報告を行いました。また、当時の編集委員で旧職員の山梨絵美子氏、中村節子氏、井上さやか氏、中村明子氏らから、この資料群に関するさまざまな情報をご提供いただき、この度の目録公開に至りました。
 当研究所が長年にわたって蓄積してきた資料群を、文化財に関する研究課題の解決の糸口として、また幅広い分野の新たな研究を創出する契機として、ご活用いただければ幸いです。

※資料閲覧室利用案内
https://www.tobunken.go.jp/joho/japanese/library/library.html
アーカイブズ(文書)情報は、このページの下方に掲載されています。

※東京文化財研究所年史資料
https://www.tobunken.go.jp/joho/japanese/library/pdf/archives_TOBUNKEN_NENSHI_0.0_20230331.pdf

年史編纂資料の研究活用に向けた記述編成―東文研史資料を例として―第8回文化財情報資料部研究会の開催

研究会の様子
資料展示の様子

 東京文化財研究所は、平成20(2008)年〜平成22(2010)年に『東京文化財研究所七十五年史』を刊行しています。この「資料編」と「本文編」の2冊から成る年史を編纂するために収集・作成された文書類を中心とする資料群は、当研究所の活動を語る上で欠かせない歴史資料です。文化財情報資料部文化財アーカイブズ研究室では、これらを「東京文化財研究所年史資料」として、目録作成を進めています。
 アーキビストの仕事の1つに、利用者が資料を使えるよう、また将来にわたって資料を保存するために、記述と編成によって資料群を整理する過程があります。記述により、資料の詳細や構成要素を説明し、分析、記録、データ化が行われます。一方、資料の出所や元の順序を尊重し、その文脈を保護し、資料をモノと情報の側面から整理するのが編成です。こうして、資料検索および利用のためのデータが作成されます。
 令和5(2023)年1月31日にオンラインを併用して開催された表題の研究会では、同部研究補佐員・田村彩子がアーカイブズの資料整理について発表しました。国際文書館評議会が定める「国際標準アーカイブズ記述」第2版を用い、年史編纂資料を研究活用に資するための記述編成を考察するとともに、今回新たに発見された資料が紹介されました。会場には一部の資料が展示され、参加者が資料実物を手に取る機会も設けられました。
 同部同室長・橘川英規の司会のもと、かつての七十五年史編集委員にもご参加いただき、同書編纂における編集委員会の沿革や役割などを伺いながら、資料群を活用した新たな研究の可能性について、また現行の研究プロジェクトの記録の保存とその継承の重要性について、活発な意見交換が行われました。「東京文化財研究所年史資料」は今春の公開を予定しています。

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