年史編纂資料の研究活用に向けた記述編成―東文研史資料を例として―第8回文化財情報資料部研究会の開催

研究会の様子
資料展示の様子

 東京文化財研究所は、平成20(2008)年〜平成22(2010)年に『東京文化財研究所七十五年史』を刊行しています。この「資料編」と「本文編」の2冊から成る年史を編纂するために収集・作成された文書類を中心とする資料群は、当研究所の活動を語る上で欠かせない歴史資料です。文化財情報資料部文化財アーカイブズ研究室では、これらを「東京文化財研究所年史資料」として、目録作成を進めています。
 アーキビストの仕事の1つに、利用者が資料を使えるよう、また将来にわたって資料を保存するために、記述と編成によって資料群を整理する過程があります。記述により、資料の詳細や構成要素を説明し、分析、記録、データ化が行われます。一方、資料の出所や元の順序を尊重し、その文脈を保護し、資料をモノと情報の側面から整理するのが編成です。こうして、資料検索および利用のためのデータが作成されます。
 令和5(2023)年1月31日にオンラインを併用して開催された表題の研究会では、同部研究補佐員・田村彩子がアーカイブズの資料整理について発表しました。国際文書館評議会が定める「国際標準アーカイブズ記述」第2版を用い、年史編纂資料を研究活用に資するための記述編成を考察するとともに、今回新たに発見された資料が紹介されました。会場には一部の資料が展示され、参加者が資料実物を手に取る機会も設けられました。
 同部同室長・橘川英規の司会のもと、かつての七十五年史編集委員にもご参加いただき、同書編纂における編集委員会の沿革や役割などを伺いながら、資料群を活用した新たな研究の可能性について、また現行の研究プロジェクトの記録の保存とその継承の重要性について、活発な意見交換が行われました。「東京文化財研究所年史資料」は今春の公開を予定しています。

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