研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


文化遺産国際協力コンソーシアム第32回研究会「中央ヨーロッパにおける文化遺産国際協力のこれまでとこれから」の開催

第32回研究会の案内チラシ
第32回研究会の様子

 文化遺産国際協力コンソーシアム(東京文化財研究所が文化庁より事務局運営を受託)は、令和5(2023)年1月28日に第32回研究会「中央ヨーロッパにおける文化遺産国際協力のこれまでとこれから」をウェビナーにて開催しました。
 ロシアのウクライナ侵攻によって大きな被害を受けている文化遺産に対する国際協力を考える上では、同国が位置する地域の地理的・文化的な特徴を知り、歴史背景にも十分に配慮する必要があります。このような観点から、ウクライナを含む中東欧や南東欧地域について学ぶとともに、同地域の文化遺産に関する日本の国際協力活動を振り返り、さらに今後の協力のあり方について考えることを目的としました。
 篠原琢氏(東京外国語大学)が「中央ヨーロッパという歴史的世界」、前田康記(文化遺産国際協力コンソーシアム)が「中央ヨーロッパに対する国際支援と日本の国際協力」、嶋田紗千氏(実践女子大学)が「セルビアの文化遺産保護と国際協力」、三宅理一氏(東京理科大学)が「ルーマニアの歴史文化遺産とその保護をめぐって」のタイトルで、それぞれ報告しました。
 これらの講演を受け、金原保夫氏(文化遺産国際協力コンソーシアム欧州分科会長、東海大学)のモデレートのもと、講演者を交えて行われたパネルディスカッションでは、相互理解に立脚した国際協力の重要性や、持続的な文化遺産保護に結びつけるための現地人材育成や組織体制づくり支援の必要性などが指摘され、活発な意見が交わされました。本研究会の詳細については、下記コンソーシアムのウェブページをご覧ください。
https://www.jcic-heritage.jp/news/32nd-seminar-report/

国際協力調査「海域交流ネットワークと文化遺産」報告書の刊行

国際協力調査ワーキンググループの様子
国際協力調査 オンライン聞き取り調査の様子

 古来より交流の舞台となったのは陸上だけではなく、海上もまたヒトとモノが行き来する舞台であり、「海の道」を通じて異なる文化や文明が出会ってきました。近年では、これまでの研究の中心であった陸から海へと視点を移して、海を切り口にグローバルヒストリーを捉え直そうとする潮流が生まれています。同時に、海を介した交流に関連する文化遺産の調査や研究、そして保護においても新たな視点が求められるようになってきています。
 文化遺産国際協力コンソーシアム(東京文化財研究所が文化庁より事務局運営を受託)では、海の道を通じた交流によって遠く離れた地域を結ぶ多数の線が網の目を形成し、さらにはその影響が港湾などを通じて内陸部にも広がっていくことを「海域交流ネットワーク」と捉え、世界各国や地域での海域交流ネットワークに関わる文化遺産保護の動向を把握することを試みました。
 2か年の調査の中で、27か国・29機関を対象にしたアンケート調査や、オンラインでの聞き取り調査、フォーラム・シンポジウムなど、様々な手法による調査や関連活動を実施した結果、海域を通じたヒト、モノ、文化の交流をめぐる多種多様な様相が浮かび上がりました。また、海域交流ネットワークに関連する様々な文化遺産の現状や、国際協力を通じた支援が期待される分野や活動に関する情報も寄せられました。詳細は国際協力調査「海域交流ネットワークと文化遺産」報告書をご覧ください。コンソーシアムでは、引き続き同分野における情報収集・発信に取り組んでいく予定です。(https://www.jcic-heritage.jp/publication/

文化遺産国際協力コンソーシアムによる第30回研究会「文化遺産×市民参画=マルチアクターによる国際協力の可能性」の開催

第30回研究会
ディスカッションの様子

 文化遺産国際協力コンソーシアム(東京文化財研究所が文化庁より事務局運営を受託)は、令和4(2022)年2月11日に第30回研究会「文化遺産×市民参画=マルチアクターによる国際協力の可能性」をウェビナー形式で開催しました。
 この研究会では、日本国内の市民参加型まちづくりや官民協働のノウハウが活用された事例および民間を主体とする国際交流の多面的な展開に関する事例をもとに、多様なアクターの参画によって期待される文化遺産国際協力の可能性について議論が行われました。
 講演では、村上佳代氏(文化庁地域文化創生本部文化財調査官)より、「国際協力によるエコミュージアム概念に基づく観光開発―ヨルダン国サルト市を事例として―」と題し、自身が青年海外協力隊・技術協力プロジェクト専門家として参加した活動が紹介されました。また、丘如華氏(台湾歴史資源経理学会事務局長)より、「歴史遺産保存における連携―学び合いの旅―」と題し、民間の立場からの数十年にわたる多彩な活動経験が紹介されました。
 後半のパネルディスカッションでは、上記2氏に加え、西村幸夫氏(國學院大學教授)と佐藤寛氏(アジア経済研究所上席主任調査研究員)に参加いただき、活発な議論が展開されました。人々の暮らしの場を文化遺産として扱う場合における、当事者間の利害関係に配慮した合意形成の重要性や多様なアクターが文化遺産の価値を共有していくための努力の必要性など、SDGsの実践にも繋がる多くの視点を得ることができました。
 当日は国内外から120名近くの方々にご参加いただきました。コンソーシアムでは引き続き、マルチアクターによる文化遺産国際協力可能性について検討を進めていく予定です。
 本研究会の詳細については、下記コンソーシアムのウェブページをご覧ください。
https://www.jcic-heritage.jp/20220221/

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