研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


令和4年度シンポジウム「気候変動と文化遺産―いま、何が起きているのか―」の開催

パネルディスカッションの様子

 文化遺産国際協力コンソーシアム(東京文化財研究所が文化庁より受託運営)は10月23日、東京大学農学部弥生講堂一条ホールにおいて令和4年度シンポジウム「気候変動と文化遺産―いま、何が起きているのか―」を開催しました(文化庁及び国立文化財機構文化財防災センターとの共催)。
 今回のシンポジウムでは、歴史上の気候変動と人間社会とのかかわりから気候変動を考え、気候変動下で有形、無形の文化遺産が直面している問題を共有、議論することで、文化遺産のより良い未来のための国際協力の可能性を探ることを目的としました。
 冒頭の青柳正規・文化遺産国際協力コンソーシアム会長のあいさつでは、気候変動を前提とした文化遺産保護における国際的な協調と連携の強化という来たるべき課題に対して、まずは多くの人々が気候変動と文化遺産の関係を正しく理解することがその第一歩となることが強調して述べられました。
 続いて、気候変動と文化遺産に関連した研究に関する講演として、中塚武・名古屋大学大学院環境学研究科教授から「古気候学から見た過去の気候適応の記憶としての文化遺産の可能性」、ウィリアム・メガリー・イコモス気候変動ワーキンググループ座長から「我々の過去を未来へ:文化遺産と気候変動の緊急事態」、石村智・東京文化財研究所無形文化遺産部音声映像記録研究室長から「気候変動と伝統的知識:オセアニアの事例から」と題して、それぞれに異なる視点から気候変動と文化遺産を捉えた発表が行われました。
 後半のパネルディスカッションでは、園田直子・国立民族学博物館教授をモデレーターに、上記の講演者に建石徹・文化財防災センター副センター長を加えた4人のパネリストによる討論が行われました。建石副センター長による東日本大震災を事例とした文化財防災の取り組みと課題の紹介の後、会場も交えて、気候変動が文化遺産保護の活動に与える影響や文化遺産をかたちづくる伝統的な知識が気候変動対策の鍵となる可能性など様々な意見が交わされました。そして、最後の高妻洋成・文化財防災センター長による閉会のあいさつでは、引き続き多くの人々の知恵を集めながら、この課題に取り組んでいくことの重要性が確認されました。
 本シンポジウムの詳細については、下記コンソーシアムのウェブページをご覧ください。
令和4年度シンポジウム「気候変動と文化遺産―いま、何が起きているのか―」を開催しました|JCIC-Heritage

文化遺産国際協力コンソーシアムによる第30回研究会「文化遺産×市民参画=マルチアクターによる国際協力の可能性」の開催

第30回研究会
ディスカッションの様子

 文化遺産国際協力コンソーシアム(東京文化財研究所が文化庁より事務局運営を受託)は、令和4(2022)年2月11日に第30回研究会「文化遺産×市民参画=マルチアクターによる国際協力の可能性」をウェビナー形式で開催しました。
 この研究会では、日本国内の市民参加型まちづくりや官民協働のノウハウが活用された事例および民間を主体とする国際交流の多面的な展開に関する事例をもとに、多様なアクターの参画によって期待される文化遺産国際協力の可能性について議論が行われました。
 講演では、村上佳代氏(文化庁地域文化創生本部文化財調査官)より、「国際協力によるエコミュージアム概念に基づく観光開発―ヨルダン国サルト市を事例として―」と題し、自身が青年海外協力隊・技術協力プロジェクト専門家として参加した活動が紹介されました。また、丘如華氏(台湾歴史資源経理学会事務局長)より、「歴史遺産保存における連携―学び合いの旅―」と題し、民間の立場からの数十年にわたる多彩な活動経験が紹介されました。
 後半のパネルディスカッションでは、上記2氏に加え、西村幸夫氏(國學院大學教授)と佐藤寛氏(アジア経済研究所上席主任調査研究員)に参加いただき、活発な議論が展開されました。人々の暮らしの場を文化遺産として扱う場合における、当事者間の利害関係に配慮した合意形成の重要性や多様なアクターが文化遺産の価値を共有していくための努力の必要性など、SDGsの実践にも繋がる多くの視点を得ることができました。
 当日は国内外から120名近くの方々にご参加いただきました。コンソーシアムでは引き続き、マルチアクターによる文化遺産国際協力可能性について検討を進めていく予定です。
 本研究会の詳細については、下記コンソーシアムのウェブページをご覧ください。
https://www.jcic-heritage.jp/20220221/

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