セインズベリー日本藝術研究所でのプロジェクト協議とイギリスでの講演



イギリス・ノーフォーク州の州都ノリッチにあるセインズベリー日本藝術研究所(Sainsbury Institute for the Study of Japanese Arts and Cultures, 以下SISJAC)は、ヨーロッパにおける日本芸術文化研究の主要拠点のひとつです。SISJACと東京文化財研究所は、平成25(2013)年から「日本藝術研究の基盤形成事業」の一環として、海外で発表された日本美術に関する文献、海外で開催された日本美術に関する展覧会のデータ提供をSISJACより受け、それを東文研総合検索(https://www.tobunken.go.jp/archives/)にて公開する共同事業を進めています。
この事業の一環として、毎年、文化財情報資料部の研究員がノリッチを訪れ、関係者との協議や講演を行っており、令和6(2024)年度は、文化財情報資料部近・現代視覚芸術研究室長・橘川英規および研究員・田代裕一朗の2名が2月24日から3月2日にかけて現地に滞在しました。
橘川は、2月26日にロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)日本研究センターにて、「Matsuzawa Yutaka and Europe: Conceptual art exchange(松澤宥とヨーロッパ:コンセプチュアル・アートの交流)」と題して講演を行いました。翌27日にはノリッチに移動し、イースト・アングリア大学附属のセインズベリー・センター(Sainsbury Centre)にて、「日本の近現代美術アーカイブの構築と活用:東京文化財研究所の取り組み」というテーマで講演を行いました。この講演後、イースト・アングリア大学図書館のグラント・ヤング氏、セインズベリー研究ユニット(アフリカ・オセアニア・アメリカ美術担当)の司書パット・ヒューイット氏、SISJACのリサ・セインズベリー図書館司書である平野明氏が、それぞれの機関や部門での活動や、日本に関連するアーカイブズについて発表しました。続いて、SISJAC准教授ユージニア・ボグダノヴァ=クマー氏の司会のもと、参加者間で活発な意見交換が行われました。
2月28日にはSISJACにて、現在進行中のデータベース構築について、今後の展望を共有しながら協議を行いました。また、令和7(2025)年度に渡英を予定している田代からは、今回の渡英中に行った大英博物館等での調査を踏まえ、専門とする韓国朝鮮美術史に関するイギリスでの研究交流や資料調査の可能性、さらにそれに基づいた講演の構想について提案があり、今後の具体的な方向性について活発な議論が交わされました。
今後もSISJACとの連携をさらに強化し、日本美術に関する国際的な情報発信と研究支援の充実に努めていきたいと考えています。