「令和7年度博物館・美術館等保存担当学芸員研修(上級コース)」の開催




令和7(2025)年7月7日~11日に「令和7年度博物館・美術館等保存担当学芸員研修(上級コース)」を開催しました。
昭和59(1984)年以来、東京文化財研究所で開催してきた「博物館・美術館等保存担当学芸員研修」は、令和3(2021)年度より「基礎コース」「上級コース」として再編され、博物館・美術館等で資料保存を担当する学芸員等が、業務に必要となる知識や技術について、基礎から応用まで、幅広く習得できることを目的として実施しています。「基礎コース」は保存環境を中心とした内容で文化財活用センターが担当し、「上級コース」は保存環境だけでなく文化財保存全般を当研究所保存科学研究センターが担当し実施しています。
令和7年度の上級コースでは、保存科学研究センターで行っている各研究分野での研究成果をもとにした講義・実習や外部講師による様々な文化財の保存と修復、文化財レスキューに関する講義を実施しました。特に今年度はカビに効果のある燻蒸剤の使用ができなくなったことから代替に関する講義・実習に関心が多く寄せられました。
- 文化財修復原論
- 文化財の科学調査
- 空気質(空気質について/空気汚染の文化財の影響/換気の考え方)
- 保存環境に関する理論と討論
- 文化財IPM概論・実習
- 修復材料の種類と特性
- 屋外資料の劣化と保存
- 近代化遺産の保存
- 多様な文化財の保存と修復
- 博物館の防災
- 民具の保存と修復
- 大量文書の保存・対策
- 紙本作品等の保存と修復
- 写真の保存・管理
受講生からは、「自館に限定することなく、地域全体の文化財保存で活用できる多くの知見に触れられたことから、周辺の学芸員とも情報を共有するなどして、より広い視点から今回の研修で得た知識を活かしていきたい」「研修期間を通じて受講者同士のつながりもでき、実務上の問題をより専門的に相談し合える同じ立場の仲間を全国に得る良い機会となりました」等の意見をいただき、この研修の目的の一つである、他館とのつながりを作る絶好の場となったことが窺えました。また、講義だけでなく、討論や実習の機会がもう少しあると良いという意見もあり、今後さらに研修内容を充実させていけるよう検討していきたいと思います。