第18回 東京文化財研究所 無形文化遺産部 公開学術講座「文化財修理と在来絹製作―絹織製作研究所の技術をつなぐ―」の開催

会場の様子

 令和6(2024)年12月6日、東京文化財研究所地下セミナー室・地下ロビーで第18回公開学術講座を開催しました。当研究所では平成27(2015)~平成30(2018)年にかけて長野県飯島町にある勝山織物株式会社絹織製作研究所(以下、絹織製作研究所)の志村明氏(選定保存技術「在来絹製作」各個認定保持者)と秋本賀子氏の染織品修理の材料として用いられる絹の製作技術について調査を行い、令和3(2021)年に「無形文化遺産(伝統技術)の伝承に関する研究報告書『絹織製作技術』付属DVD付(東京文化財研究所刊行物リポジトリ、以下『絹織製作技術』)を刊行しました。本学術講座では、同技術に焦点を当て、当研究所で行った調査・記録事業を紹介するとともに、染織品を取りまく修理技術や修理材料の製作技術の状況を広く知っていただくことを目的としました。
 当日は、無形文化遺産部主任研究員・菊池理予より開催趣旨を説明し、文化庁の多比羅菜美子氏より「文化財の保存技術―在来絹製作―」を、駒ケ根シルクミュージアム館長の伴野豊氏(九州大学名誉教授)より「我が国における蚕種保存」をご講演いただきました。その後、参加者にはロビー展示を観ていただく時間を設けました。ロビー展示では、伴野豊氏よりお借りした様々な蚕種の繭や、絹織製作研究所で制作された繰糸技法や織組織のパターンを変えた着物5領、着物と同じ生地で作った巾着袋を展示しました
休憩後は、映像「普及編―絹織製作技術―」の上映や、絹織製作研究所の秋本賀子氏による「絹織製作技術の現状と継承」の報告、鼎談「染織品修理と修理材料の依頼―実例を通じて―」では、株式会社松鶴堂の依田尚美氏と絹織製作研究所の秋本賀子氏にご登壇いただきました。
 今回の学術講座を通じて、有形文化財を取りまく無形の技術に焦点をあてることで、現在の技術を受け継ぐ意義について考える機会となりました。今後も無形文化遺産部では、無形の技術についての調査結果を公開するとともに、課題を議論できる場を設けていきます。

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