松島健旧蔵資料の公開

資料の一部
手書きノート

 東京文化財研究所では、かつて在籍した職員や研究者の文化財研究に関わる資料を収蔵し、その整理と公開に努めています。令和5(2023)年に寄贈を受けた故・松島健氏の資料もそのようなOB・OG資料のひとつであり、この度整理が終わってすべての資料を公開いたしました(松島健旧蔵資料 :: 東文研アーカイブデータベース)。仏教彫刻史を専門とした松島健氏は文化庁美術工芸課主任文化財調査官を経て東京国立文化財研究所情報資料部長を務めましたが、病のため1998年に逝去されました。ご遺族から資料の寄贈を受けて以来、少しずつ整理を進めておりましたが、この度すべての資料を公開する運びとなりました。その内容は文化庁時代に松島氏が携わった文化財指定の資料や修理記録、研究資料、紙焼き写真、仏像の調査記録、直筆の研究ノート等、文化財行政官としてあるいは彫刻史研究者としての営為を示すものです。寄贈された当初から資料の大部分は分類され、あるいは年代ごとにファイルに収められており、また、制作年代の判明する仏教彫刻を自ら年表としてまとめた手書きノートなどからは研究者としての松島氏の几帳面かつ真摯な人柄が偲ばれました。研究者が遺したこのような資料群には貴重かつ唯一無二の情報が含まれていますが、ともすると管理・公開する場に恵まれず、最悪の場合は廃棄されてしまうことがあります。東文研は創設期から美術資料のアーカイブ構築を使命としてきた機関であり、人手や予算は決して潤沢ではありませんが、これからも研究資料の蒐集と公開に取り組んでまいります。

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