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モントリオール美術館(カナダ)からの日本絵画作品搬入

開梱作業風景

 海外の美術館、博物館には多数の日本美術品が所蔵されています。しかしほとんどの館には日本美術品の修復を手掛けることのできる技術者がいないため、劣化や損傷が進行しているにもかかわらず適切な処置を講じることができずにいます。在外日本古美術品保存修復協力事業では海外にある作品を調査し、その中から文化財的な価値が高く、かつ修復の緊急度も高いと判断した作品を所蔵館と協議の上で一度日本に持ち帰り、国内で万全な体制のもと修復を行ったのち返却しています。
 カナダで最も古い美術館であるモントリオール美術館は、1879年の開館以来移転や拡張を経て現在では45,000点以上の作品を所蔵しており、その中には日本の作品も数多く含まれています。平成30(2018)年に実施した現地調査の結果にもとづき、今回、同館所蔵の「熊野曼荼羅」(絹本着色掛軸、一幅)および「三十六歌仙扇面貼交屏風」(金地着色屏風、六曲一双)の2件を対象として保存修復を行うこととしました。
 作品の搬送に所蔵館担当者が随伴できないなど、新型コロナウィルス禍の影響を受けつつも、令和3(2021)年3月に無事日本へ作品を輸入することができました。今後、現状調査ならびに高精細画像撮影を含むドキュメンテーションを皮切りに一連の保存修復作業に着手する予定です。

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