バガン遺跡(ミャンマー)における技術協力事業打ち合わせ

壁画の図像に関する民俗学的調査
虫害による壁画の損傷状況調査

 東京文化財研究所では、ミャンマーのバガン遺跡において煉瓦造寺院の壁画と外壁の保存修復方法に関する技術支援および人材育成事業に取り組んでいます。同遺跡は、昨年に開かれたユネスコの第43回世界遺産委員会において、世界文化遺産への登録が決定しました。これを受けて、新たにバガン国際調整委員会“Bagan International Coordinating Committee”(BICC)が創設され、保全制度の改善に向けた取り組みが行われています。同委員会では、支援活動を行う各国の取り組みをこれまで以上に有効活用すべく、情報共有と相互調整を目的とした国際会議を毎年開催する方向で調整が進められています。
 こうした現地状況の変化に係る情報を収集するため、令和2(2020)年1月15日から31日にかけてミャンマー宗教文化省(ネピドー)、バガン考古支局をそれぞれ訪問し、今後の協力事業の方向性について意見交換を行いました。その中では、現地専門家に対するさらなる技術指導を望む声が聞かれ、支援活動を継続していくことで合意しました。
 また、これと並行して昨年の7月に続き壁画の図像に関する民俗学的調査と、虫害により発生したと考えられる壁画の損傷状況の把握および対策協議のための現地調査を行いました。図像に関する調査では、仏教の受容とミャンマーの土着信仰との関係性について現地有識者から聞き取り調査を行うとともに、壁画に土着信仰による影響が見られないか、バガンを中心に詳細な作例収集を行いました。今後はバガン以外にも調査範囲を広げていく予定です。一方、虫害による壁画の損傷状況の調査では、シロアリやドロバチによる壁画の破損や汚染が確認されました。今後は現地の環境にあった対策が構築できるよう詳細な調査を行う予定です。
 東京文化財研究所では、バガン遺跡における文化財保存を包括的に捉えながら、現地専門家の意見を取り入れつつ、技術支援および研究活動を継続していきます。

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