イストリア地方における壁画保存に向けた共同研究(その2)

教会でのチェックシートを活用した壁画の状態調査

調査対象にした壁画の一例
文化遺産国際協力センターでは、令和3(2021)年度より、運営費交付金事業「文化遺産の保存修復技術に係る国際的研究」において、壁画の維持管理および保存修復に係る共同研究に取り組んでいます。
その一環として、クロアチア文化メディア省美術監督局、イストリア歴史海事博物館、ザグレブ大学と共同で、クロアチアの北西部に位置するイストリア地方の教会壁画を対象にした維持管理システムの開発を進めています。この地域では、中世からルネサンス期にかけて数多くの壁画が制作され、その数は、現在確認されているだけでも150件にものぼります。その保存状態を調査・記録し、収集したデータを専門家の間で共有することで、維持管理に役立てていこうというのがこの研究のねらいです。
令和7(2025)年3月10日から14日にかけて、現地を訪問し、先行調査(リンク:https://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/2065796.html)で作成した保存状態に関するチェックシートを用いて、12ヶ所の教会で導入テストを実施しました。このチェックシートは、壁画が描かれた建物、壁画の技法・材料、そして保存状態という3つの主要な焦点に基づいて構成されています。テストを通じて、チェックシートに記載された確認項目の見直しを行い、より実用的で効果的なものへと進化させることができました。今後は、デジタルアーカイブの構築を目指し、導入テストを引き続き実施していく予定です。