アンコール・タネイ遺跡保存整備のための現地調査XVI-XVII-中央塔保存修復のための技術協力

修復前後の中央塔西入口周辺(フォトグラメトリにより作成した3Dモデル)
石材修復中の様子

 カンボジアの世界遺産・アンコール遺跡群の北東部に位置するタネイ遺跡は、12世紀末から13世紀初頭に建立されたと考えられている仏教寺院で、高さ約15mの中央塔は、一部が崩壊しているものの、仏教モチーフの装飾が刻まれたペディメントが四方に配され、内部には本尊の仏像が据えられていたと思われる台座も残っています。
 その各面の入口枠は上下左右の4辺がそれぞれ大きな砂岩材で構成されていますが、東西面ではともに上枠が折れているなど破損・変形が進行して危険なため、ながらく木製のサポートで支持されていました。今回、この中央塔の東西入口まわりを構造的に安定させるとともに、木製のサポートを撤去することで、訪問された方々により本来に近い寺院の姿を眺めながら伽藍中軸線上を安全に歩いていただけるよう、入口枠とこれに隣接する範囲を対象に部分的な修復作業を実施しました。
 修復に先立って、令和6(2024)年3月開催の国際調整委員会会合にて計画が提案、承認されました(前稿を参照)。その後、6月からアンコール・シェムリアップ地域保存整備機構(APSARA)の主導のもと、現場作業が開始されました。東京文化財研究所は、本修復事業への技術協力の一環として、令和6(2024)年6月15日~7月2日に2名(XVI次現地調査)、8月7日~11日に1名(XVII次現地調査)を派遣し、APSARA職員と協力して作業を行いました。具体的には、①中央塔入口の構成石材および周辺散乱石材の解体・移動前記録、②部分解体、③石材修復、④再構築、⑤修復後記録、の手順で進行し、8月派遣時に無事に修復が完了しました。

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