アンコール・タネイ遺跡保存整備のための現地調査XV-東バライ西土手上テラスの保護作業

東バライ西土手上テラスの保護作業の様子
アドホック専門家らによる視察での現場説明

 前稿では、タネイ寺院遺跡の最東端に位置する土手上テラスの発掘調査について報告しました。今回はその続報として、令和6(2024)年3月8日~29日に実施した、同テラス遺構の保護作業についてまとめます。
 このテラスは、アンコール遺跡群を特徴づける巨大貯水池の一つである東バライの周堤西辺の上面から東斜面にかけて建造されています。そのため、発掘した遺構のうちとくに傾斜地に接するラテライト石材が雨季に流出しないように保護することが喫緊の課題となっていました。作業ではまず、既に本来の位置から移動して不安定な状態になっていた石材4材を据えなおしました。続いて、傾斜面上の石材の外周に沿って、「ライムモルタル」と呼ばれる、石灰を混和した土モルタルを突き固めた盛土による補強を行いました。また、土手上面の発掘範囲についても、とくに雨水による洗掘が懸念されるテラス外周部を中心に埋め戻しを実施しました。今後はさらに、遺構の崩壊を招く要因の一つである、テラス直上および周辺に生えている樹木の伐採も予定しています。
 今次滞在期間中の3月14日~15日にかけては、アンコール・サンボープレイクック遺跡保存開発国際調整委員会(ICC-Angkor/Sambor Prei Kuk)会合が市内で開催され、各チームから担当遺跡での修復プロジェクト等に関する報告が行われました。タネイ寺院遺跡の保全についても、東京文化財研究所とアンコール・シェムリアップ地域保存整備機構(APSARA) が共同で、これまでの実施経過と今後の計画を報告しました。またこれに先立つ3月8日には、各修復プロジェクトへの技術的助言を担うICCアドホック専門家等が現場視察に訪れました。令和6(2024)年度に実施を予定している中央塔東西入口部分の修復を含む今後の調査・整備方針について現地で説明を行い、計画への承認が得られました。

to page top