「山崎架橋図」の光学調査—令和7年度第6回文化財情報資料部研究会の開催
研究会の様子
リーフレット表紙
東京文化財研究所は令和6(2024)年に和泉市久保惣記念美術館と共同研究の覚書を締結し、同館所蔵作品の調査研究を行っています。「山崎架橋図」は現在の京都府乙訓郡大山崎町と京都府八幡市の間、桂川・宇治川・木津川が合流して淀川になる地点で、宝積寺の本尊・十一面観音が老翁に化身して山崎橋を架けた、という奇談を描いています。画面には橋の工事にまつわる劇的な霊験譚と人々の風俗表現が、天王山と男山の風景や宝積寺の景観描写の中に溶け込むように表されています。この作品は美術史だけでなく、歴史学や国文学の研究においても注目されてきました。現在では経年変化により、微細な表現や画面下方の縁起文は見づらくなっていますが、画面に存在する情報を最大限引き出すことを目指して2回にわたり光学調査を実施してきました。
今回の研究会では江村知子が「山崎架橋図の光学調査について」と題した発表を行い、コメンテーターとして和泉市久保惣記念美術館長の河田昌之氏より、「山崎架橋図」の研究史と課題についてご発言いただきました。令和7(2025)年3月に刊行した「山崎架橋図」のリーフレットは、近日、東京文化財研究所リポジトリで公開予定です。さらに、より多くの研究者が高精細画像を閲覧できるように、デジタルコンテンツの作成とウェブ公開も計画しています。この共同研究の成果が広く活用され、作品への理解が深まることを目指してまいります。
