研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


SPレコード鑑賞会開催

SPレコード鑑賞会の様子

 3月28日、SPレコード公開鑑賞会を無形文化遺産部研究室で開催しました。無形文化遺産部は、芸能部時代から伝統芸能に関する音源を収集してきましたが、そのなかには、現在では希少価値となった多くのSPレコードも含まれています。大正時代から昭和初期にかけて録音されたSPレコードを一般の愛好者に公開し、伝統芸能の継承に関して、あるべき継承の姿をレコードを通して考える場としたい、という意図のもとに、能狂言に対象を絞って鑑賞会を行いました。会場の都合で参加者を限定しましたが、当日は21名が参加し、かつての謡の表現の多様性にみな感慨を深くしていました。

伝統楽器情報検索のデータを大幅更新

 今年5月に、ホームページ上で伝統楽器情報検索を開始しましたが、データを2倍にふやしてリニューアルしました。元になったデータベースは、平成13年より行った伝統楽器のアンケート調査ですが、都道府県市町村の教育委員会からの回答に加えて、今回アップしたのは全国の博物館から寄せられた回答分です。従来は文化財に指定された楽器を中心としていましたが、博物館のデータが加わったことで、各地の博物館が所蔵する名器や珍しい楽器が検索できるようになりました。検索項目や方法は以前と同じですが、三味線、箏、鼓など、いわゆる楽器らしい楽器のデータがぐっとふえて、検索の楽しみがいっそう増しました。

国立歴史民俗博物館蔵紀州徳川家伝来楽器コレクションの調査

 昨年より、国立歴史民俗博物館と共同で同博物館蔵紀州徳川家伝来楽器コレクションの調査を始めました。紀州家10代藩主治宝が、収集した雅楽器を中心とするコレクションは一部散逸していますが、博物館が所蔵する楽器だけでも総数157件をこえ、その他楽譜や付属文書も多数有しています。博物館では平成16年に資料図録を刊行しましたが、それに基づきながら専門家の目を加えてさらに詳しい調査をすすめる予定です。7月から管楽器の調査が始まりましたが、調査の結果、従来「賀松」と呼ばれてきた能管が、『銘管録』(明和年間に徳川幕府に提出した銘管一覧)に記載のある「古郷の錦」である可能性が強くなりました。

伝統楽器情報検索、開始しました

伝統楽器情報データベース一覧表示画面

 『東文研ニュース』No.25の記事でご紹介した『伝統楽器・所在データベース』(芸能部編刊 平成18年3月)に基づく「伝統楽器」検索が、本格的にご利用いただけるようになりました。元になったデータベースは、平成13年より全国の博物館及び都道府県市町村の教育委員会に依頼して行った伝統楽器のアンケート調査のうち、教育委員会からの集計結果とホームページより入手した情報が中心になっています。検索項目は、楽器分類、楽器名、指定、都道府県名の4項目で、分類はザックス・ホルンボステル法に基づき、弦鳴楽器・気鳴楽器・体鳴楽器・膜鳴楽器・出土楽器となっています。楽器名は「鼓」「鐘」「笛」など名称の一部でも検索可能ですし、指定は、国・都・道・府・県・市・区・町・村の9種で検索できます。ただし、情報を得た時点のデータに従っているため、データ入手後市町村合併が行われた場合の変更は反映していません。伝統楽器の所在確認に役立つよう、データは随時追加を行っていく予定です。

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