肥後琵琶の伝承および関連資料の現状調査

善光寺で奉納演奏する後藤昭子氏

 わが国では、文化財保護法に基づき「音楽、舞踊、演劇その他の芸能およびこれらの成立、構成上重要な要素をなす技法のうち、我が国の芸能の変遷の過程を知る上に重要なもの」を「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財(芸能関係)」に選択しています。令和3(2021)年3月時点で31件が対象となっていますが、そのうち24件は個人の持つ技法を選定しているため、当該者の逝去によって全ての技法が実質的に途絶えている状況です。一方、団体の持つ技法を選定している7件のうち、歌舞伎下座音楽の杵屋栄蔵社中は、リーダーであった三世杵屋栄蔵氏の逝去(1967)により求心力を失っているものの、ほかの6件(鷺流狂言、肥後琵琶、琉球古典箏曲3団体、和妻)は各団体が技法を継承しているとされます。
 無形文化遺産部では、「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財(芸能関係)」のうち、肥後琵琶の継承に関わってきた肥後琵琶保存会やその後継者、琵琶を含む肥後琵琶関連資料について、昨年より情報収集をはじめ、今年に入って本格的な調査を開始しています。このたび6月22~24日にかけて第二回調査を実施しました。今回は、前回調査に引き続き、山鹿やまが市立博物館に所蔵されている肥後琵琶奏者・山鹿やましか良之氏(1901.3.20-1996.6.24)の遺品調査を行いました。資料は、山鹿氏が愛用した生活用品から写真、琵琶に至るまで多岐にわたり、その件数は84件(点数はさらに多い)に及びました。また、今回の調査最終日は、偶然にも山鹿氏の命日にあたったため、山鹿氏に師事した後藤昭子氏をはじめ、ごく近しい人たちの間で営まれた法要と琵琶の奉納演奏の場に同席させていただく機会を得ました。
 なお、本調査については、三度目の調査を行ったのち、年度内に肥後琵琶の伝承および関連資料の現状調査に関する報告書を刊行予定です。

to page top