アンコール・タネイ遺跡保存整備のための現地調査X―外周壁遺構の発掘調査

雨季の東門
出土した外周壁基底部と旧地表面

 別稿にて報告のあった令和4(2022)年1月9日から1月24日にかけての派遣事業の一環として、タネイ寺院遺跡外周壁遺構の発掘調査を行いました。APSARAと共同で修復中の同寺院東門は、既に再構築作業が完了していますが、現状では門付近の地表が周囲より低く、雨季に雨水が滞留することが以前から問題になっています。寺院建立当初からこのような地形だったとは考えづらく、本来は何らかの形で排水が考慮されていたと推定されました。このため、今後の東門周辺の排水計画策定に向けて、旧地表のレベルおよび状態確認を目的とした発掘調査を実施しました。
 発掘調査は、門の南北に接続していた外周壁跡(撤去された時期や理由は不明)を対象に、北東角とそこに至る途中で壁基部のラテライト材が現地表に露出している部分の、計3か所で実施しました。調査の結果、現地表下約30cmの地点でアンコール時代の地表面を確認し、東門周囲とほぼ高低差はなく平坦な地形だったことがわかりました。特に排水溝等の痕跡もなく、当時は地中浸透などの自然排水に依っていたと考えられます。
 現状では門の北方に地面の高まりがあって排水の妨げとなっているため、今後まずはこの付近の表土を取り除き、雨水の滞留状況が改善されるかを確認することとしました。寺院建物の修復と並行して、このような周辺整備作業も進めていく予定です。

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