バガン遺跡(ミャンマー)における技術支援に係る経過状況の把握

良好な状態を保つ保存修復箇所(中・上段部)と、未修復箇所に育った草木

 東京文化財研究所では、ミャンマーのバガン遺跡において同国宗教文化省 考古国立博物館局バガン支局の職員を対象にした煉瓦造寺院の壁画と外壁の保存修復方法に関する技術支援および人材育成事業に取り組んできました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大及びミャンマー情勢の悪化に伴い、現地における活動ができない状況が続いています。そこで、本事業の対象として保存修復を進めてきたMe-taw-ya寺院及びLokahteikpan寺院の状態を把握するため2ヶ月おきにオンライン会議を開催し、現地職員によって撮影された写真を参考に維持管理に係る助言を続けています。
 令和3(2021)年12月19日の会議では、Me-taw-ya寺院の現状について報告があり、活動休止後約2年間が経過した現在も保存修復箇所が良好な状態を保持していることが伝えられました。バガン遺跡では、目地漆喰の補修や寺院の雨漏り対策が繰り返し行われてきましたが、その多くは1年も経たずに修復材料が傷んでしまうという問題に悩まされ続けてきました。2021年は特に雨量が多く、例年にはない甚大な被害が出たとの報告も受けています。
 本事業では、こうした現地専門家が抱える悩みに寄り添い、その対策を講じるべく研究を続けてきました。新しく導入した修復材料は、最も古い施工箇所では5年が経過しています。文化財の保存修復では作業そのものも重要ですが、その後の経過状況を見守ることも重要です。現地での活動ができない今の状況は非常にもどかしいですが、複数年にわたる保存修復の効果を確認できたことは大きな成果といえます。
 1日も早く、現地での活動が再開できることを願いつつ、引き続きできる限りの協力を続けていきたいと思います。

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