国宝・特別史跡臼杵磨崖仏の保存修復に向けた基礎研究

曝露試験用の接着サンプルの設置
岩壁の水分量を計測するための含水率計の設置

 国宝・特別史跡臼杵磨崖仏は平安時代後期から鎌倉時代にかけて、熔結凝灰岩を掘りくぼめた龕(がん)内に彫刻された磨崖仏群であり、ホキ石仏第1群、ホキ石仏第2群、山王山石仏、古園石仏の四群から構成されています。
 これらの磨崖仏は、龕によって風雨の直接の影響を受けづらい環境ではあるものの、冬期における磨崖仏表面での地下水や雨水の凍結融解を繰り返すことで生じる凍結破砕や、乾燥期の水分の蒸発に伴い析出する塩類による磨崖仏表面の剥離・粒状化によって、一部で磨崖仏の風化が進行していました。風化を防ぐ取り組みとして、覆屋の設置と磨崖仏背面に流れる伏流水の制御のための工事や、風化により生じた剥落片も元の位置に貼り戻す作業が過去に行われ、東京文化財研究所も長らく関わってきた経緯があります。
 このような保存修復を経た臼杵磨崖仏ですが、現在、ホキ石仏第2群の阿弥陀如来坐像の膝付近における表面剥落が再び発生していることから、臼杵市と磨崖仏の保存修復を目的とした共同研究を行うこととなりました。具体的には、新設された覆屋内の温湿度変化および岩壁の含水率を継続して確認する環境調査と、剥落片の強化処置と再接着するための材料の検討を行う予定であり、令和3(2021)年10月18日~19日には計測器と曝露試験用の接着サンプルを設置しました。
 今後は、定期的に計測データの確認と接着サンプルの対候性を観察し、臼杵磨崖仏の適切な保存修復に向けて文化庁、大分県、臼杵市と協議していきます。

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