スタッコ装飾及び塑像に関する研究調査(その2)

平成29(2017)年に修復を終えたミケランジェロ作の塑像 『河の神』 “Dio Fluviale”
17世紀のスタッコ装飾例(サンタ・マリア・アッスンタ大聖堂)

 文化遺産国際協力センターでは、令和3(2021)年度より、運営費交付金事業「文化遺産の保存修復技術に係る国際的研究」の一環として、スタッコ装飾に関する研究調査を行なっています。令和3(2021)年9月11日には、スタッコ装飾の保存に携わる欧州の専門家に参加いただき、第2回目となる意見交換会を開催しました。
 意見交換では、粘度調整やひび割れ抑制のための工夫として、日本で漆喰壁の需要が高まった江戸時代から調合されるようになった海藻のりや紙スサの利用に注目が集まりました。スタッコ装飾の長い歴史をもつ欧州においても同様に、これまで様々な創意工夫が行われてきましたが、日本とは異なる材料が使われています。このことから、特定の時代において各国や地域で利用されていた添加剤を本研究調査における比較対照項目に追加し、データベース化していくことが決まりました。
 またこれに関連して、様々な添加剤に含まれる成分が、化学的にどのように作用することで効果をもたらすのかという点についても研究を進めていく予定です。制作に用いられた素材やその性質、さらには制作時の技法は、その後の経年劣化や破損の様相にも大いに影響してきます。適切な保存修復方法を導き出すためにも、こうした研究は大変重要だといえます。
 本研究調査はスタッコ装飾に焦点を当てる形でスタートしましたが、その歴史を紐解いていくと塑像とも密接に関係していることがみえてきました。今後は、素材や制作技法に共通性が多くみられるこれらの文化財も視野に入れながら、その適切な保存と継承の方法について考えていきたいと思います。

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