日本中世のガラスを探る-第8回文化財情報資料部研究会の開催

研究会の様子

 令和元(2019)年12月24日に開催された第8回文化財情報資料部研究会では、東海大学非常勤講師の林佳美氏が「日本中世のガラスを探る—2018・2019年度の調査をもとに—」という題目で発表されました。
 氏は長年東アジアのガラス史について取り組んでおいでですが、今回の発表は学位論文をまとめられた後の平成30(2018)年度より始められた日本国内で出土する13世紀から16世紀のガラス製品の集成と実見調査による成果の一端についてお話いただいたものです。日本の中世のガラスについてはこれまでほとんど作例が知られていなかったことによりその実態はほぼまったく不明でした。しかし近年、文献記録やこれまで知られていた資料に加え、京都や博多などでのこの時期に前後する出土品が知られるようになったことなどにより、今後の位置付けが期待されるようになっています。林氏は、13世紀から16世紀の日本出土ガラスの研究課題として①全体像の把握、②製作地の判別、③通史的・広域的視野からの考察の3点を示したうえで、これまでに行われた伝世資料や出土資料への検討作業によって得られたガラス器の製作技術や由来などに対する具体的な見解を示されました。
 また今回の研究会では、ガラス工芸学会の理事である井上曉子氏にもコメンテータとしてご参席いただき、研究者の少ないなかで地道に進められているガラス史研究の最前線についてのさまざまな話題や議論が行われました。

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