東京国立博物館所蔵国宝平安仏画のウェブコンテンツ公開

国宝平安仏画ウェブコンテンツトップページ
普賢菩薩像の化仏

 東京文化財研究所は東京国立博物館の所蔵する仏教絵画について共同で調査研究を行っています。その成果公開の一環として、令和元(2019)年8月20日より、東京国立博物館所蔵国宝平安仏画4点(普賢菩薩像、虚空蔵菩薩像、千手観音像、孔雀明王像)に関するウェブコンテンツ(tnm-tobunken.tobunken.go.jp)公開をはじめました。
 絵画は一見平面に見えますが、実は絹や紙といった支持体に色料が複雑に重ねられた複層的なもので、それらが光を受け、層に反射もしくは透過した光の複合体を目でとらえて、私たちは絵画イメージを形成しています。そこには、絵が描きあげられる過程や、完成後にその作品に起こったことの痕跡が積み重なっています。
 それらをとらえるためには、顔料の粒子の大きさや形状、画絹の織り方や経糸・緯糸の太さとなど、材料や、それらの層の重なりに関する情報が重要な手がかりとなります。そうした絵画の深層を、作品に触れたり、分析のための試料を採取したりすることなく把握する方法として、光学的調査は最も有効なものの一つです。当研究所は、その前身である帝国美術院付属美術研究所が1930年に開所して間もなく、美術工芸品の光学調査をアジア諸国に先駆けて開始し、今日まで継続してきました。このたびの共同調査も光学的調査法に基づくものです。
 平安仏画には仏の衣や瓔珞に細かく繊細な文様を施すなど、現世を超越した仏の世界を一幅の絵に表す入念な描写が見られます。しかし、作品保護のため、それらをとらえられるほど作品に近づいて見られる機会は稀です。このたびのウェブコンテンツでは、作品の高精細写真をご自身のPCやタブレット端末でご覧いただくことができます。現在、公開しているのは、全体からある程度の細部を拡大して見ることができる可視光による写真のみですが、詳細な細部や、赤外線や蛍光、X線による写真、絵画材料に含まれる元素の蛍光X線分析の結果も順次公開する予定です。今後の展開にどうぞご期待ください。

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