「ICOM京都大会ICFA委員会における研究成果の公表と情報の共有「水口レイピアー日本で造られたヨーロッパの剣」」

ICOM京都大会ICFA委員会での発表風景

 令和元(2019)年9月1日(日)より7日(土)までの一週間、国立京都国際会館をメイン会場として開催された第25回ICOM(国際博物館会議)京都大会のICFA(International Committee for Museums and Collection of Fine Arts)委員会(美術の博物館・コレクション国際委員会)が3日に開催した個別セッション2「アジアの博物館における西洋美術、西洋博物館におけるアジア美術」において、文化財情報資料部の小林公治が甲賀市教育委員会の永井晃子氏と共同で、Minakuchi Rapier, European Sword produced in Japan(水口レイピア、日本で造られたヨーロッパの剣)と題して発表を行いました。
 17世紀初め頃にもたらされたヨーロッパ製の細形洋剣を日本国内で模して製作されたこの水口レイピア(甲賀市藤栄神社所蔵十字形洋剣)については、2013年以来国内外の専門家と共同で調査と研究を行ってきたところであり、その経過と成果についてはこれまでもこの活動報告で一部を報告してきましたが(第10回文化財情報資料部研究会「甲賀市藤栄神社所蔵の十字形洋剣に対する検討」の開催 https://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/243895.html、甲賀市水口藤栄神社所蔵十字形洋剣に対するメトロポリタン美術館専門家の調査と第7回文化財情報資料部研究会での発表 https://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/247392.html)、今回の発表では、これまでの調査後に新たに実施した大型放射光施設SPring-8での剣身部分析結果や、その後の歴史的検討を含めた全体的な内容を加えたほか、地球規模での文化交流が起きた17世紀の日本にこうした洋式剣が存在し、さらにそれに良く似せた模造品の製作がこの当時に行われ現在まで伝世していることを欧米を含む世界に向けて発信することを目的として行ったものです。
 満席の発表会場からは洋式剣が模造製作された背景にはどのような意識があったのかといったさまざまな質問や議論がなされ、こうした文化財が日本に存在することに対して広い関心が示されました。

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