トルコ共和国における研修「壁画保存に向けた応急処置方法の検討と実施」の開催

研修参加者との集合写真
アラ教会での現場実地研修風景

 文化遺産国際協力センターでは、令和元(2019)年6月11日〜15日にかけ、トルコ共和国国立保存修復センター所属の保存修復士を対象にした研修「壁画保存に向けた応急処置方法の検討と実施」を開催しました。
 最終回(通算4回目)となる本研修では、前回の研修で実施した修復材料の実験講習結果の検証と、壁画を含め、岩窟教会を構成する様々な要素を複合文化財として捉えた場合の総合的な応急処置方法を考察するため、地質学や構造設計エンジニア、美術史など多岐に渡る専門分野から講師を招き講習会を開きました。また、本研修を通じて学んだことを確認するため、ウフララ渓谷沿いにあるアラ教会を対象に、壁画の応急処置を目的とした仮想事業案を組み立てる現場実地研修を行いました。そして、最終日には現場で収集した情報をもとにして、「保存環境」、「壁画の技法と材料」、「壁画の損傷と応急処置」という3つのテーマで発表してもらい、その内容について議論することで本研修の締めくくりとしました。研修を終えた参加者にアンケート調査を実施したところ、「日々携わる業務の中では気付くことのできない『維持管理』の大切さを再認識することができた」との感想が多くみられました。
 3年間にわたりトルコ共和国における壁画の保存管理体制改善に向け取り組んできた本事業は、ひとつの区切りを迎えました。本事業を通じて築かれた日本とトルコ共和国とのネットワークを大切にしながら、今後も文化財保存をテーマにした取り組みを続けていきたいと思います。

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