「文化財修復の現状と諸問題に関する研究会」開催報告

総合討議中の様子

 近年、文化財に対する注目が増しており、活用も積極的に推進されています。それに伴い、修復対象とされる文化財も増加しており、その中で、従来の修復方法や修復に対する概念では対応できなくなってきている事例も多くなってきました。このような現状を踏まえ、平成30年(2018年)11月22日に、「文化財修復の現状と諸問題に関する研究会」を開催しました。今までの修理の概況に関して共有した上で、現在の修復の際に認識される問題点を文化財各分野の専門の先生方からご紹介頂きました。
 歴史資料のご専門の佐々木利和北海道大学客員教授からは、東京国立博物館、文化庁、国立民族学博物館と歴任されてきたご経験から「美術工芸品修理への思い」と題された、歴史資料の保存について、また民俗資料保存の問題点などについてご講演頂きました。文化庁地主智彦調査官からは、「近年の歴史資料修理の成果と課題」について、詳細な事例報告を含んだ現状のご報告を頂きました。東京国立近代美術館の北村仁美工芸室長からは、「文化財修復の現状と近年の問題点 〜「十二の鷹」を中心に〜」とのタイトルで、近年のご所蔵品の修復の詳細とその中における問題をご提起頂きました。京都府の中野慎之主任からは、修理にあたり、実際にどのような協議が行われ、どのような意思決定が必要かについてご報告頂きました。総合討議においてもたくさんのご質問を頂き、活発な質疑応答が行われました。総勢104名の方がご参加下さり、終了後のアンケートでも、文化財修復に関する大きな情報交流の場が今後も継続することを期待されていることが実感されました。本研究会の内容は、来年度報告書として刊行予定です。

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