「膠と修理 ー《序の舞》を守るー 展」開催報告

展示風景

 保存科学研究センターでは、修復に必要な材料の開発を行ってきています。そのような研究対象の一つとして膠があります。膠は古代から接着剤として用いられている材料で、動物のコラーゲンの分解物です。使用された動物の種類は文献に残る限り多岐にわたり、さらにその製造方法も様々な工夫が凝らされてきました。その一方で、材料・製造方法による膠の物性の差異については科学的にはほとんど明らかになっておらず、近年、ようやく研究が行われるようになりました。修復材料研究室では、これらのデータをもとに、修復材料としての膠の性質について研究を行ってきています。
 重要文化財「序の舞」を修復するにあたり、これらの成果をもとに膠の選定が行われ、特に胡粉の発色を妨げない膠を用いることにより、修復による変化をできる限り生じないような修復が可能となりました。
 この成果を平成30(2018)年10月14日〜19日の会期で東京藝術大学陳列館において「膠と修理 ー《序の舞》を守るー 展」として、東京藝術大学大学院保存科学研究室と共に主催展示いたしました。共催の膠文化研究会のご協力も得て、使用された膠の実資料、科学的データ、及び修復中に撮影された拡大画像を含む多数の画像を用いた展示となり、宇髙健太郎客員研究員によるギャラリートークも行われ、研究成果と文化財修復現場との関連について、広く理解を得られる貴重な機会となりました。

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