近世土佐派の画法書を読む――文化財情報資料部研究会の開催

研究会の様子
土佐光起・光成筆「秋郊鳴鶉図」東京国立博物館 http://webarchives.tnm.jp/

 平成30(2018)年6月26日の文化財情報資料部月例の研究会では、“土佐光起著『本朝画法大伝』考―「画具製法并染法極秘伝」を端緒として―”と題し、下原美保氏(鹿児島大学)をコメンテーターにお招きして、小野真由美(文化財情報資料部)による発表が行われました。
 土佐光起(1634~54)は、ながく途絶えていた宮廷の絵所預に任ぜられたことから、「土佐家中興の祖」とされる絵師です。光起は、伝統的なやまと絵に、宋元画や写生画などを取り入れ、清新で優美な作品を多くのこしました。
 『本朝画法大伝』(東京藝術大学所蔵)は、光起が著した近世を代表する画法書のひとつです。今回、同著の彩色法について、狩野派の画法書『本朝画伝』(狩野永納著)や『画筌』(林守篤著)、狩野常信による写生図(東京国立博物館所蔵)との比較を行いました。たとえば、「うるみ」という色彩について光起は、「生臙脂ぬり、後に大青かくる」と伝えますが、狩野派の画法書では胡粉を混色する異なる方法を記しています。そこで、常信の写生図を参照すると、「山鳩図」「葛図」に「うるミ」と注記があり、ヤマバトの足やクズの花の実際の固有色が、光起の伝える彩色法に一致することがわかりました。こうした比較から、『本朝画法大伝』が他の画法書にくらべて、実践的かつ具体的な内容であることがみえてきました。
 研究会においては、土佐派、住吉派、狩野派、そして日本画研究など様々な立場から、ご意見をいただきました。今後は、そうした諸研究者のみなさまと、同著の更なる読解をすすめ、江戸時代の画法についての考察を深めていきたいと考えております。

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