「トルコ共和国における壁画の保存管理体制改善に向けた人材育成事業」における研修「壁画保存に向けた課題と問題」の開催

研修参加者との集合写真
Tagar Church (St. Theodore Church)での調査

 文化庁より受託した標記事業の一環として、平成29年(2017)10月30日~11月2日にかけて、研修「壁画保存に向けた課題と問題」を開催しました。Nevşehir Hacı Bektaş Veli Universityを会場に開かれた本コースには、トルコ共和国内10箇所の国立保存修復センターより30名の保存修復士に参加いただきました。
 本研修は、トルコ共和国の壁画を保存していくうえで重要となる応急処置のあり方を見直し、そのプロトコルを確立させていくことを目標にしています。第1回目となる今回の研修では、イントロダクションとして「壁画の技法や劣化の原因」、「保存修復における原則」などをテーマに講義を行いました。それぞれの講義内容について発表者と受講者との間で意見交換の場を設けることで、課題について全員で取り組んでいこうとする姿勢が生まれ、結束力が高まりました。
 また、研修の最終日には来年度より開催を予定している現場実地研修の対象となるタガール教会(聖セオドア教会)を訪れ、前日までの講義内容に順じて教会内部に描かれた壁画の保存状態を観察しました。一般的な保存修復事業とは異なり、壁画を保存・管理していくうえで重要と考えられる応急処置方法とはどうあるべきかを議論し、様々な意見が飛び交いました。
 現時点においてトルコ共和国には、壁画の保存管理システムというものが十分に確立されていません。この事業は、トルコ共和国との歩みを揃えながら進めていくことが重要です。今回も研修事業が始まる直前には、内容の充実に向けた意見交換を目的にトルコ共和国文化観光省ならびにガーズィ大学芸術学部保存修復学科を訪問しました。研修は平成31年度までに計4回の開催を予定しています。その中で文化財の保存活動に従事する専門家が現実的に実施可能な仕組みを参加者全員で作り上げていきたいと思います。

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