アンコール・タネイ遺跡保存管理整備計画策定ワークショップの開催

ワークショップの様子

 東京文化財研究所ではこれまで15年以上にわたり、アンコール・シエムレアプ地域保存整備機構(APSARA)との間で、共同研究や人材育成研修の実施等、様々な協力活動を行ってきました。この間、一貫してそのフィールドとなってきたのがアンコール遺跡群のタネイ寺院遺跡です。平成29(2017)年1月26‐28日の3日間にわたり、同遺跡に関する保存管理整備計画作りを支援するため、現地ワークショップを開催しました。
 本ワークショップには、APSARA機構のRos Borath副総裁をはじめ、遺跡保存、観光、森林、水利の各課から計約20名のスタッフが参加しました。初日はAPSARA本部にて遺跡保存管理の基本的な考え方や計画策定の手順等に関するレクチャーを行い、2日目はタネイ遺跡および周辺における現況確認調査、3日目は再び室内に戻って計画の基本方針と保存整備事業の方向性に関する検討作業を行いました。
 タネイ遺跡は、観光客で賑わう世界遺産アンコールのコアゾーン内にある主要遺跡の一つでありながら、鬱蒼とした密林に囲まれた廃墟の様相を今日も色濃く留めています。ワークショップでの議論の結果、このような景観をできるだけ維持しながら安全に遺跡を見学できるようにすること、遺跡へのアクセスを本来の経路に復するとともに来訪者が周辺遺跡との関係性を体感的に理解できるようにすること、など大きな方針について合意し、今後も関係各課が連携しながら、考古発掘等の調査も含めた具体的な事業内容の検討を着実に進めていくことで一致しました。本事業はカンボジア側主体で行われる遺跡保存整備のパイロットモデルとしても位置付けられており、このような作業が適切かつ円滑に進められるよう、本研究所としても必要な技術的支援を継続していきます。

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