国際研修「紙の保存と修復」2016の開催

修復実習における裏打ち実演

 平成28(2016)年8月29日から9月16日にかけて、国際研修「紙の保存と修復」を開催しました。本研修は、東京文化財研究所とICCROM(文化財保存修復研究国際センター)の共催で、1992年から実施しており、日本の紙文化財の保存修復の技術と知識を伝えて海外の文化財保護へ貢献することを目的にしています。本年は36カ国64名の応募の内、リトアニア、ポーランド、クロアチア、アイスランド、韓国、ニュージーランド、エジプト、スペイン、ベルギー、ブータンの文化財保存修復専門家10名を招きました。
 本研修は、講義、実習、視察から成ります。講義では、日本の文化財保護の概要、日本の無形文化財保護制度、修復材料とその基礎科学、修復に用いる道具について取上げました。実習では、国の選定保存技術「装こう修理技術」保持認定団体の技術者を講師に迎え、紙作品の修復から巻子仕立てを主に実施し、さらに和綴じ冊子の作製、屏風と掛軸の実物を用いた取扱いも行いました。視察では、名古屋、美濃、京都において、手漉き和紙の製作現場、修復材料・道具店、障壁画や掛軸などの文化財で装飾された歴史的建造物、伝統的な日本の絵画の修復現場などを訪問しました。研修最終日にはディスカッションを行い、各国における和紙の利用状況や課題などについて意見を交換しました。本研修を通して、日本の修復材料と道具そのものだけでなく関連の知識や技術に理解を深め、各国の文化財の保存修復に応用されることが期待されます。

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