バガン(ミャンマー)における地震発生後の壁画被災状況調査

被害を受けた寺院
地面に散らばった壁画片

 平成28年(2016)8月24日にミャンマー中部のチャウ近郊を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生し、バガン遺跡でも数多くの仏塔寺院に被害が出ました。これを受けて、9月24日から30日までの期間、遺跡群内の壁画保存状況を確認すべく調査を行ないました。
 現地調査には、ミャンマー宗教文化省 考古国立博物館局バガン支局職員の方にもご同行いただき、事前に大きな被害がでたとの報告を受けていた寺院を中心に、壁画の損傷状況に関する調査を行いました。その結果、壁画の支持体に相当する煉瓦造寺院に発生した亀裂や煉瓦材の動きがプラスターの傷みに繋がっていることや、パガン王朝期にみられる数種類に及ぶ壁画制作技法や材料によって損傷程度に違いが生じていることが分かりました。また、過去の修復で使用された幾つかの材料が、バガン遺跡の壁画には適合しておらず、かえって負担になっていることも明らかとなりました。
 現地では、今も被災したバガン遺跡を守るべく復興活動が続けられています。当研究所の事業として外壁の応急処置方法や壁画の保存修復方法を検討しているMe-Taw-Ya寺院(No.1205)にも被害がでました。今後は、これまでの事業方針に加えて、地震によって浮き彫りとなった問題点にも考慮した修復材料の導入や、緊急時における対処方法の確立、およびそこに携わる専門家の育成にも目を向けながら、今後の活動に取り組んでゆきたいと思います。

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