実演記録「平家」第七回の実施

田中奈央一氏
日吉省吾氏

 無形文化遺産部では、継承者がわずかとなり伝承が危ぶまれている「平家」(「平家琵琶」とも)の実演記録を、平成30(2018)年より「平家語り研究会」(主宰:武蔵野音楽大学教授薦田治子氏、メンバー:菊央雄司氏、田中奈央一氏、日吉章吾氏)の協力を得て実施しています。第七回は、令和7(2025)年1月31日、東京文化財研究所 実演記録室で《竹生島詣》(全曲)と《宇治川》(前半)を収録しました。
 《竹生島詣》は、琵琶湖畔を北上する途中、平家の副将軍で詩歌に優れた平経正平が、小舟で竹生島に渡って渡された琵琶で秘曲を弾いたところ、袖に白竜が現れたという吉兆を語ります。竹生島には芸能神でもある弁財天が祀られているので、琵琶との融和が感じられます。また《宇治川》は、木曽義仲を追う源頼朝軍の梶原源太景季かげすえと佐々木四郎高綱の先陣争いがテーマですが、前半では景季が所望した名馬・生食いけずきが高綱に与えられたことをきっかけに高まる二人の競争心と、激流と化した宇治川をはさんで義仲に対峙する緊張が表現されます。
今回の実演記録では、《竹生島詣》(全曲)を菊央氏と田中氏、《宇治川》(前半)を日吉氏に演奏してもらい、記録撮影しました。
 今後とも無形文化遺産部では、「平家語り研究会」の「平家」伝承曲の演奏および復元演奏の記録をアーカイブしていく予定です。

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