スタッコ装飾及び塑像に関する研究調査(その5)

遺構にみられるスタッコ装飾
遺跡内での調査風景

 文化遺産国際協力センターでは、令和3(2021)年度より、運営費交付金事業「文化遺産の保存修復技術に係る国際的研究」において、スタッコ装飾及び塑像に関する研究調査に取り組んでいます。
 その活動の一環として、令和6(2024)年9月6日~7日にかけてイタリアのソンマ・ヴェスヴィアーナにあるローマ時代の遺跡を訪問しました。ヴェスヴィオ火山の北側に位置するこの遺跡では、平成14(2002)年以来、東京大学を中心とする発掘調査団によって調査が進められており、これまでに紀元前後に創建されたと考えられる遺構が発見されています。そして、様々な調査の結果、これらの建物が歴史書の中に記されたローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの別荘である可能性が高いことから関心が寄せられています。
 今回の訪問では、遺構の中に残るスタッコ装飾に焦点を当て、使用されている材料や技法、彩色を対象にした事前調査を実施し、研究計画書を作成しました。この計画書の中では、スタッコ装飾や壁画が残る装飾門の現代的な保存修復方法について検討を深めることについても言及しており、遺跡の保存と活用を視野に入れています。
 今後は、ギリシャ・ローマ時代の考古遺跡を対象にしたスタッコ装飾の技法・材料に係る比較調査を通じて構造や特性について理解を深めるとともに、それらの保存修復方法やサイトマネジメントのあり方について研究を続けていきます。

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