「ネパールの被災文化遺産保護に関する技術的支援事業」による現地派遣

昨年度調査成果のプレゼンテーションの様子
シヴァ寺院からの倒壊部材調査

 東京文化財研究所は、2015年のネパール・ゴルカ地震によって被災した文化遺産の保護に関する調査・支援を昨年度より行なっています。本年度は、文化庁より文化遺産国際協力拠点交流事業(ネパールの被災文化遺産保護に関する技術的支援事業)の委託を受け、4月28日から5月8日まで現地派遣を実施しました。
 今回はまず、ネパール考古局およびユネスコ・カトマンズ事務所の技術スタッフ約30名を対象に、昨年度の調査成果報告会を開催すると共に、考古局長に英文報告書を贈呈しました。参加者からは熱心な質問が出され、今後の技術支援への強い期待を感じました。
 次に、現地調査における中心的な作業としては、カトマンズ・ハヌマンドカ王宮内で倒壊したシヴァ寺院の回収部材について原位置の同定および番付を行なうと共に、写真撮影による各部材のドキュメンテーションを実施しました。この部材調査を通じて、同寺院は少なくとも3期にわたる修復を経ていることが分かってきました。過去の修復に関する記録が乏しいネパールでは、このような部材から得られる情報が、今後の再建に向けた復原設計のための有用な資料になるものと期待しています。
 引き続き各分野の外部専門家にも参加いただいて、「建築構法」「構造」「都市計画」「無形文化遺産」等の多岐にわたる調査を予定しています。現地での活動をネパールの方々と共に実施しながら、様々な技術の移転も図っていきたいと思います。
 なお、上記報告書(日本語版とも)は本研究所のウェブサイトにも掲載していますので、どうぞご参照ください。
http://www.tobunken.go.jp/japanese/publication/pdf/Nepal_NRICPT_2016_J_s.pdf

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