東京国立博物館所蔵品画絹データベースの公開
画絹データベースの画面
顕微鏡撮影画像
東洋・日本の絵画作品の伝統的な基底材に絹があります。古いものでは中国の唐時代、あるいは日本の平安時代の仏教絵画として、絹地に描かれた作例が現存しており、東洋絵画では古代から現代に至るまで、絹が用いられています。東アジアでは、伝統的に絹織物が作られてきましたが、衣服などは着用によって摩耗・劣化し、明確に時代のわかる古い作品はごく限られています。一方、絵画に用いられている絹(画絹)は、消耗が少なく、また大半が平織で作品同士を比較しやすいため、絹本の制作年代を考える上での基準となり得ます。その画絹の織組成や糸の形状を調べることは美術史的な研究のみならず、材料や技術の歴史や変遷を考える上でも大きな研究課題と言えます。こうした問題意識から、東京文化財研究所では平成31(2019)年に、東京国立博物館と「美術工芸品に用いられた画絹及び染織品の組成にかかる共同研究に関する覚書」を締結し、東京国立博物館の研究員とともに同館所蔵作品を中心に、デジタルマイクロスコープ(HiRox製RH-2000)を用いて絹本絵画の撮影と調査を行い、研究を進めています。このたび東京国立博物館博物館情報課のご協力のもと、東京国立博物館ウェブサイトの「東京国立博物館研究情報アーカイブズ」にて、本研究の成果をデータベースとして公開開始しました。まだ掲載作品は成果のごく一部ですが、国宝の「普賢菩薩像」、「一遍聖絵」、李迪筆「紅白芙蓉図」などの重要作品の顕微鏡撮影画像と織組織・糸形状の計測値を公表しています。今後さらに収録作品を追加していく予定です。このデータベースを活用して、作品研究や材料技法の研究を推進してまいります。
東京国立博物館のウェブサイト
東博所蔵品画絹データベース簡易検索 (tnm.jp)