文化財保護法令集に係るスペインでの調査

スペイン国立文化遺産研究所での聞き取り調査
アンダルシア州立歴史遺産研究所での聞き取り調査

 文化遺産国際協力センターでは、平成19(2007)年度から各国の文化財保護法令の収集・翻訳に取り組み、これまで28集を刊行してきました。この事業は、文化財に関するわが国による国際協力やわが国の保護制度の再考に資することを目的としています。これに関連して、令和6(2024)年3月19日~28日に次の対象国であるスペインでの調査を行いました。
 スペインではかつては中央集権的な保護体制がとられてきましたが、1980年代から州への権限委譲が進められました。国土が広く文化も多様なため、州ごとの保護にも違いがあり、とくに近年では文化的景観、産業遺産、無形遺産に関する法整備を行う州が多いようです。また、スペインの指定文化財は “Bien de Interés Cultural(文化的価値を有する資産)”と呼ばれますが、これは歴史遺産のいわば氷山の一角にすぎません。各州の文化財研究所が“Bien de Patrimonio Historico(歴史遺産の構成資産)”を幅広く特定することにより、指定以外でも基礎自治体の都市計画でなんらかの保護を受けるものが多いようで、この点が一つの特徴と考えられます。
 今回の調査をつうじて、わが国にはこれまでほとんど紹介されていなかったスペインにおける文化財保護の一端がうかがえました。州による文化財保護も、実際は国の法律に適合する義務があります。このことから令和6(2024)年度には国の法律を、翌年度には制度の整備が進んでいる州の法律を調査し、わが国の文化財保護を見なおすための資料を提供できればと考えています。

to page top