欧州専門家との石造文化財の保存修復に向けた共同研究

神谷神社の七重石塔
欧州における石造文化財の保存修復に係る類例調査

 人類が古くから文化的な生活を営むうえで活用してきたもののひとつに石材があります。その用途は石器や建材、彫刻作品と幅広く、その中には石造文化財と分類され保存に向けた取組みにより受け継がれてきたものが数多くあります。国内と国外を比較してみると、石造文化財として位置付けるうえでの定義は異なりますが、石材の保存修復は世界中で様々な取組みがなされてきました。特に、日本の「木の文化」に対して「石の文化」として知られる欧州では、世界を牽引する先進的な調査・研究が積み重ねられてきており、そこから得られた成果は、国内の石造文化財の保存にも活用できると考えます。
 硬度や安定性という観点から木材に比べ耐久性に富む石造文化財は、屋外で保存されるものも少なくありません。そのため、天候や天災、周辺環境といった外的要因によって劣化、欠損してしまうことが多く、その保存を考えるうえでは様々な視点にたち対策を講じる必要があります。であるからこそ、多くの事例に目を向け、各分野の専門家で問題を共有し、解決に向けた研究を進めることが大切です。
 令和6(2024)年2月16日に香川県坂出市の神谷神社を訪れ、境内に立つ七重石塔の保存に向けた調査を実施しました。火山礫凝灰岩で造られた石塔は、雨水により基壇の侵食が進んだ危険な状態にあり、亀裂や欠損もみられます。この状況を欧州の専門家と共有し、令和6(2024)年3月1日にはフィレンツェでイタリア国家認定文化財修復士の方々と類例調査や研究計画に関する打合せを行いました。今後は、日本の石造文化財の保存修復における現状の改善に繋がる研究を目指します。

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