今泉雄作『記事珠』のウェブ公開

東京国立博物館が所蔵する馬の埴輪のスケッチ(現在の所蔵情報はこちら

 一瞬で対象を記録することのできる写真は文化財の調査にとって有効な手段です。しかし、撮影技術が普及する前は、手書きのメモやスケッチで対象を記録するしかありませんでした。写真と比べて時間のかかるメモやスケッチは、多くの場合、対象の一部の要素や特徴についての記録となります。それは不完全な記録といえるかもしれません。しかし、取捨選択された要素のみが書きとめられた記録は、当時の記録者が文化財のどこに価値や特徴を見出していたのか、言い換えれば、その文化財がなぜ今にいたるまで残されてきたのかを考える上で貴重な資料といえます。
 こういった手書きの調査記録の一端に連なる今泉雄作(1850~1931年)『記事珠』の詳細については既にご報告している通りですが(https://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/203289.html)、この度第一冊目を東京文化財研究所のウェブサイトに公開いたしました(https://www.tobunken.go.jp/materials/kijisyu)。公開にあたっては、全文をテキストデータとして書き起こし、検索機能を実装いたしました。また、手控えという性質上、筆者である今泉にとって自明のことは記載されていないため、可能な範囲で注釈を加え、さらに記録対象の情報がインターネットで公開されている場合、リンクを張るなどして情報の補足を行いました。
 書き起こしテキストの表示については、原文との比較が容易なよう、ブラウザ上でも縦書きになるよう設定いたしました。画像と縦書きの書き起こしテキストが同時に確認できるよう努めましたが、改行の都合でかえって見えにくい場合もあるかと思われます。今後も縦書き表示の資料の公開に備えて、レイアウトや技術的な検証を続けてまいります。

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