世界遺産研究協議会「複雑化する世界遺産をみまもる目」の開催

案内チラシ(表)
研究協議会における討論の様子

 文化遺産国際協力センターでは、平成28(2016)年から世界遺産制度に関する国内向けの情報発信や意見交換を目的とした「世界遺産研究協議会」を開催しています。令和5(2023)年度は「複雑化する世界遺産をみまもる目 -作業指針、事前評価そして影響評価-」と題して、ユネスコ他が昨年とりまとめた遺産影響評価(HIA)の管理者向けガイダンスの話題を中心に、世界遺産の評価のあり方と制度運用に焦点をあてました。令和5(2023)年12月21日に東京文化財研究所で対面開催した今回は、全国から地方公共団体の担当者ら90名が参加しました。
 冒頭、文化遺産国際協力センター国際情報研究室長・金井健からの開催趣旨説明に続き、鈴木地平氏(文化庁)が「世界遺産の最新動向」と題して直近の世界遺産委員会における議論や決議等の報告を行いました。その後、文化財情報資料部文化財情報研究室長・二神葉子が「近年の作業指針の改定とその背景 -対話と信頼性の確保のために-」と題した講演、急務により欠席となった西和彦氏(文化庁)の代役として鈴木地平氏が「世界遺産の文脈における影響評価のためのガイダンス及びツールキット」の内容や留意点に関する講演を行い、最後に中澤寛将氏(青森県特別史跡三内丸山遺跡センター)が「『北海道・北東北の縄文遺跡群』の保全と遺産影響評価」と題して具体的な事例に基づくHIAの意義や課題に関する講演を行いました。さらにこれらを受けて、進化する世界遺産の価値づけやそれに対する影響評価、また今後の課題等について登壇者全員による討論を行いました。
 報告と講演、討論をつうじて、HIAガイダンスの運用にあたっては幅広い関係者(ステークホルダー)や関連制度を取り込む工夫が必要なことを再確認できました。また従来、緩衝地帯やその周辺は資産の「盾」として捉えられてきましたが、近年では、文化遺産的な価値に基づく一体的な発展を目指す地域として考える国も現れてきたようです。こうしたテーマも含め、当研究所では引き続き遺産保護に関する国際的制度研究に取り組んでいきたいと思います。

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