郭店楚簡の用字避複調査に関する中間報告―令和5年度第7回文化財情報資料部研究会の開催

質疑応答の様子

 文化財を調査するためには、文化財に関係する過去の資料を読み解くことが欠かせません。しかし資料が劣化している場合や、文字や単語の意味が現代とは異なる場合も多く、資料を読むことそのものにも十分な注意が必要です。
 令和5(2003)年12月11日の研究会では、片倉峻平氏(東北大学史料館)に「郭店楚簡の用字避複調査に関する中間報告」と題して上古中国の文字資料に見られる「用字避複」についてご発表いただきました。用字避複とは、一定範囲内に同じ漢字が重複した場合に異体字が用いられる現象で、ある種の修辞法と見なされてきましたが、その発生理由は判然としていません。片倉氏からは、この問題に対して、客観的に議論できるよう資料に記載された文字を一文字ずつ表に整理し、用字避複が発生している間隔や割合を明らかにする、という手法を糸口に調査していることをご報告いただきました。
 結論のまだ出ていない中間段階でのご発表でしたが、資料に記述された表現や文字の使い方をどのように解釈すれば良いのか、コメンテーターの宮島和也氏(成蹊大学)を中心に活発な議論が行われ、示唆に富む研究会となりました。
 なお、片倉氏はこれまでの調査の過程で作成された中国出土資料の文字データをデータ論文という形で公開されています(https://doi.org/10.24576/jadh.3.1_27)。東京文化財研究所でもこれまでに様々な資料を読み解く過程で得られた文字や単語に関するデータに注目したデータベースが構築できないか、検討して参ります。

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