調査録音「東あずま流りゅう二に絃げん琴きん」第1回の実施

収録時の様子（左から九代目藤舎蘆船氏、藤舎蘆高氏）

　令和5（2023）年11月29日、無形文化遺産部は東京文化財研究所の実演記録室（録音スタジオ）で、東あずま流りゅう二に絃げん琴きんの調査録音（第1回）を行いました。
　東流二絃琴は、細長い板に張った二本の絃を弾じつつ唄う楽器・二絃琴の流派の一つです。神事に使われる八雲やくも琴ごとをもとに、明治の初めごろ、初代藤とう舎しゃ蘆ろ船せんが東京で創始しました。夏目漱石『吾輩は猫である』に三毛子の飼い主として二絃琴の師匠が登場するように、明治中期にはかなりの流行を見せたといいます。昭和48（1973）年3月には、藤舎蘆ろ翠すい（のちの六代目蘆船）・藤舎蘆ろ雪せつ（のちの七代目蘆船）が国の「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財」に選択され、平成14（2002）年3月には八代目蘆船が台東区無形文化財に指定されました。しかし今では伝承者が極めて少なく、一般に参照できる視聴覚資料の曲目も限られていることから、調査録音を実施することとしました。
　第1回では、『窓の月』『ほととぎす』『初秋はつあき』『砧』『四季の艶えん』『隅田川』の６曲を収録しました。いずれも初代蘆船の作品で、明治18（1885）年刊『東流二絃琴唱歌集』に詞章が掲載されています。東流二絃琴「東会あずまかい」の九代目藤舎蘆船氏、藤舎蘆ろ高こう氏による演奏です。
無形文化遺産部では、今後も演奏機会の少ない芸能や、貴重な全曲演奏の記録作成を継続していく予定です。