古郡家資料の受入

古郡良雄氏による直筆資料

 薩摩藩出身で明治政府の要職を務め、画家・黒田清輝(1866~1924)の養父でもあった黒田清綱(1830~1917)とゆかりのあった古郡家より、黒田家に関連する資料を令和5(2023)年5月9日付で東京文化財研究所へご寄贈頂き、6月15日に感謝状贈呈式を行いました。
 当研究所の前身は、画家、教育者などとして日本の近代絵画史に大きな足跡を残した黒田清輝の遺言執行の一環として、美術の研究を行うために設立された帝国美術院附属美術研究所でした。そのため設立当初から多様な使命を担うようになった現在まで、黒田清輝の絵画作品や彼の活動に関する調査研究を行っており、そのことが、この度の資料ご寄贈へとつながりました。
 古郡静子氏は、黒田清綱の麻布区笄町(現在の港区西麻布)の別邸で彼の身辺の世話をしており、そのご遺族である現在の古郡家では、黒田清輝本人から贈られた、彼の描いた絵画作品を所蔵しておられました。文化財情報資料部上席研究員・塩谷純、文化財情報資料部研究員・吉田暁子とでその調査に伺った折にご遺族からお示し頂いたのが、今回の古郡家資料です。
 和綴じ冊子、書籍、書類・印刷物の計23件から成る古郡家資料の核となるのは、古郡静子氏の養子であった古郡良雄氏による、直筆の和綴じ冊子10冊です。著者本人が個人的に接した黒田清綱及び黒田清輝の記憶と、同時代資料を博捜して得られた情報とを根拠とする『黒田清綱記事集』『黒田清輝記事集』、また黒田清輝の絵画作品にも登場する笄町の邸宅周辺をめぐる回想録と資料集の2冊組による『彼の頃の麻布』を含むこれらの資料は、当時の黒田家や周辺の環境について独自の視点から緻密に記録した、貴重な一次資料です。
 今回ご寄贈頂いた古郡家資料は、資料閲覧室にて保存・公開します。また今後、重要資料の翻刻・デジタル化などを通じてより広くアクセス可能な資料とし、多様な研究に寄与する資料として後世に伝えていければ幸いです。

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