タジキスタンの文化財調査

タジキスタン国立古物博物館の収蔵庫における、ソ連時代に剥ぎ取られたさまざまな遺跡の壁画片の現状
タジキスタン国立古物博物館における、ソ連時代に修復されたペンジケント遺跡の壁画の調査風景

 「西アジア諸国等文化遺産保存修復協力事業」の一環で、8月23日から30日にかけて、タジキスタン国立古物博物館に所蔵されている壁画資料の現状調査を行いました。1991年までソヴィエト連邦に属していたタジキスタンでは、かつてロシア人専門家が主に調査や保存修復を行っていましたが、ソ連邦崩壊後は、地元の研究者や、調査・研究資金の不足が深刻な問題となっています。また、ソ連邦時代の技術や方法論が基礎になっているため、現時点では時代遅れの面が顕著となり、日本や欧米諸国からの技術移転や方法論の導入が急務となっています。
 国立古物博物館には、ペンジケント、シャフリスタン遺跡など、6世紀~8世紀の間に商人として活躍したソグド人によって描かれた極めて貴重な壁画が残されています。収蔵庫には、数十年に及ぶ発掘作業のなかで発見された数多くの壁画が、現地から剥ぎ取られてなにも処置されずに山積みにされたまま放置された状況です。特に、ソ連邦崩壊後は、全ての資料がタジキスタン国内に残されたまま、何の処置も施されていないのが現状です。こういった資料は、無計画な剥ぎ取りに対する倫理的な問題のみならず、合成樹脂の多用による壁画の暗色化など、技術的にもさまざまな問題をはらんでいます。
 学術的に非常に重要な文化遺産を保存していくために、人材育成や技術移転のための緊急的な協力が求められています。

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