被災文化財レスキュー事業 情報共有研究会報告

スクウェルチ法のデモ
会議での議論

 東北地方太平洋沖地震文化財等救援事業(文化財レスキュー事業)の発足を受け、東京文化財研究所では、文化庁ほか関係機構、関係団体等と連携をとりながら、東京での事務局設置場所として後方支援を行うこととなりました。被災した文化財レスキューでは、いろいろな想定されるケースについての応急処置の具体的なフロー(マニュアル)の整備が急務となります。とくに津波などの被害に遭った水損文化財の場合、水濡れ、塩による被害もさることながら、その後のカビなど微生物による生物劣化による被害が大きいため、これをできるだけ抑え、かつその後のより良い修復につなげていくには現地で使用できる材料、インフラを用いてどのような対応が考えられるのか、作業の方法についていくつかの方向性を探り、救援にかかわる関係者、関係諸機関・諸団体と情報を共有し、現場へ提供していきたいと考えております。この第一歩として、平成23年5月10日、「被災文化財救済の初期対応の選択肢を広げる -生物劣化を極力抑え、かつ後の修復に備えるために」というテーマで、東京文化財研究所にて標記の会を開催いたしました。
 今回は、スマトラ沖地震のときに現地の被災文化財の救援活動に積極的に関わられた坂本勇氏、海水に浸水した紙等のカビの発生度合について調査された江前敏晴氏、近年、ヨーロッパでの洪水時の被災文化財の救援法として採用されたスクウェルチ法について調査された谷村博美氏から話題提供をいただき、さまざまな分野の専門家の先生をコメンテーターにお招きして、材質ごとの初期対応についてメモとともにご意見をいただきました。また、スクウェルチ法のデモや、水や塩水に浸水した絵画などのサンプルも展示致しました。協力いただきました先生方や、終始、熱心な議論にご参加くださいました161名の参加者の方々に感謝申し上げ、このような情報が少しでもレスキューの現場でお役にたてることを心より願っております。なお、当日の資料は東京文化財研究所HPにて5月17日より公開されております。
http://www.tobunken.go.jp/~hozon/rescue/rescue20110510.html

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