ミャンマーの文化遺産保護に関する現地研修及び調査

バガヤ僧院での研修風景
壁画修復材料の調製に関する実習風景
シュエナンドー僧院の仏壇に用いられたガラスモザイク技法と損傷

 ミャンマー文化省考古・国立博物館局(DoA)をカウンターパートとする、文化庁委託「文化遺産国際協力拠点交流事業」の一環として、6月上旬から中旬にかけて現地研修及び調査を以下の通り実施しました。

 1)歴史的木造建造物保存に関する第2回現地研修
 2日から13日まで、マンダレー市内のDoA支局での座学と近郊のバガヤ僧院での現場実習を行い、DoA本・支局から建築・考古分野の職員8名とTechnological University (Mandalay)の教員・学生4名が参加しました。調査の下図となる略平面図の作成、床面の不陸や柱傾斜の測定、破損状態記録の手法などを実習し、班毎の調査成果を発表して今回研修のまとめとしました。一方、ミャンマーの木造文化財に共通する問題であるシロアリの被害について、専門家による調査を実施し、初歩的な講習も行いました。バガヤ僧院での蟻害は建物の上部にまで及んでおり、有効な対策を検討するため、研修生の協力によるモニタリング調査を開始したところです。
 2)煉瓦造遺跡の壁画保存に関する調査及び研修
 11日から17日まで、昨年より継続しているバガン遺跡群内No.1205寺院の壁画の状態調査や堂内環境調査を行い、壁画の損傷図面を作成しました。壁画の状態は比較的堅牢ですが、雨漏りに伴う壁画の崩落や空洞化、シロアリの営巣など今後の対策が必要な損傷が明らかになりました。また、バガン考古博物館では壁画の保存修復や虫害対策に関する研修を行い、DoAバガン支局の保存専門職員6名が参加しました。接着剤や補填材など修復材料に関する実習や、虫害対策に関する講義・実習については研修生らの要望が高く、今後もより応用的な内容で研修を継続していく予定です。
 3)伝統的漆工芸技術に関する調査
 11日から19日まで、バガン及びマンダレーで調査を行いました。バガンでは、軽工業省傘下の漆芸技術大学及び漆芸博物館の協力のもと、虫害調査とともに同博物館に所蔵される漆工品の構造技法や損傷に関する調査を進めました。その結果、応急的なクリーニングや展示保存環境の改善が必要と分かりました。マンダレーでは、ミャンマー産の漆材料に関する聞き取り調査のほか、漆装飾と併用されるガラスモザイク技法に関する調査を材料店と僧院において行いました。さらに、同地のシュエナンドー僧院でも、虫害調査と併せて、建物内外に施された漆芸技法について目視による観察調査を行いました。同僧院は内外部の殆どに漆装飾が施されていますが、紫外線や雨水等によって漆装飾の損傷が著しく進行していることが分かりました。

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