ミャンマーの文化遺産保護に関する技術的調査:現地調査ミッションの派遣

木造僧院での実測調査
破損が進んだ寺院建築の一例
職人工房(鋳造)の視察
ヤンゴン国立図書館での調査

 東京文化財研究所が文化庁から受託している「文化遺産保護国際貢献事業(専門家交流)」の一環として、1月26日から2月3日にかけて、ミャンマー連邦共和国に専門家調査団を派遣しました。総勢17名からなる今回の調査団は建築・美術工芸・考古の各分野を調査対象とする3班で構成し、このうち建築と美術工芸を東京文化財研究所、考古を奈良文化財研究所がそれぞれ担当しました。この調査は、同国の文化遺産保護に関するわが国からの今後の協力の方向性を明確化することを目的として実施したもので、訪問先の各地ではミャンマー文化省考古・国立博物館図書館局の担当職員の方々に同行・対応をいただきながら、円滑に調査を進めることが出来ました。
 建築班では、バガンの煉瓦造遺跡群とマンダレーなどの木造僧院建築群の双方を対象に、破損状況や保存に影響を及ぼしている要因を確認するとともに、今後の保存修復に向けた課題を特定するため、現地機関関係者や職人への聞き取り調査等も行いました。これにより、本格的な建造物修理事業は久しく実施されておらず、保存状態に関する基本的な記録作成等も十分に行われていないことなどが判明しました。
 美術工芸班では、ヤンゴン、バガン、マンダレーの国立博物館・図書館、寺院、学校、職人工房を訪問し、壁画、金属文化財、漆工芸品、書籍経典を対象に、その修復状況、保存展示環境、保存修復に関わる人材育成について調査・聞き取りを行いました。海外研修等で得た知識をミャンマー国内で還元している様子が伺えましたが、機材資材の不足、体制の不備のために十分な保存修復措置が行われていないことが分かりました。
 このほか、首都ネピドーにおける文化省との協議等を通じて、同国の文化遺産保護体制に関する基本的情報の収集も行いました。いずれの分野においても文化遺産の保存修復に必要な技術・人材等の不足は明らかですが、現地側の向上意欲は高く、共同研究や研修等の事業を通じて技術移転や人材育成を行えば、その支援効果は大きいものと期待されます。

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